第19回「生活習慣病予防のための健康管理・指導」

■歯の生活習慣

衞藤 先ほど歯磨き指導を中心にというような話もありましたが、今、う歯は非常に少なく、昭和40年代ごろは8割以上の子どもは小学校に入ってくる時に高率に虫歯を持っていたというような時代がありましたが、これは長い取組の成果だと思います。ただ、それと相反して歯周病や歯列咬合などが一方で子どもたちの健康を脅かしているようです。長生きする中でのある種健康づくりということはこれも生活習慣と密接に係わり合っていると思うのですが、そういった歯の関係で何か日頃、お感じになっていることはありますでしょうか。

徳冨 小学校ですが市でフッ化物洗口をずっと続けてきて、一人あたりのう歯数は非常に低いのですが、逆にフッ化物に頼ってしまうというところもあって、歯周疾患や噛み合わせの問題などが非常に課題になってきているなと感じています。そこで学級活動で歯科保健指導に取り組んでいます。例えば、歯磨き剤の会社のイベントに参加することでデンタルフロスの使い方まで指導できたりするので、そういうことを活用したり、食育と組み合わせて、よく噛むことの大切さやおやつの摂り方を中学年で指導し5.6年生の保健学習につなげるよう計画的に取り組んで、それを家庭へ発信しています。本当にどこでもやっておられることなのですが、学年ごとに積み重ねていくということである程度、健康行動に変容がみられるのかなというふうに思っています。ただやはり噛み合わせが悪いと磨き残しが多いというスパイラルにもなるので小学校の段階で自分に合ったブラッシングを身につけさすことが大切かなというふうに思います。

衞藤 家庭の反応はどうでしょうか。

徳冨 学校保健委員会でPTAの役員の方とお話する機会等があった時には、配布物を家で一緒に見ながら頑張ろうねというような声掛けや情報は貰えているという反応はあるのですが、指導を行った直後だけでそれをずっと継続するというのが難しい。子どもだけでなくて、親子で一緒に同じことをしてくださいというような声掛けをするようにはしているのですが。

衞藤 習慣の継続というのがやはり困難なのでしょうか。

道幸 本校も歯肉炎が今年は多くて、半分以上の生徒が引っかかっている状態なのですが、なかなか学校で歯磨き指導の時間を取るというのが難しい現状があります。校医さんは自分の歯科医院に来院してくれればブラッシング指導をするとおっしゃってくださっているし、幸いなことに近くに歯科医院もたくさんありますのでどこかかかりつけの歯科医をつくって、定期的にブラッシングを見てもらうなり、口の中の状況を見てもらうなりするように、治療報告書の提出率をあげようとしています。まずは最初の一歩、歯科医院に行くきっかけとなるよう5月に健診が終わってすぐにお知らせを出します。治療報告書が戻ってきていない生徒には7月の三者面談で再度お知らせを渡し、それでもだめならまた12月の三者面談で直接保護者に渡してアプローチをしています。

衞藤 去年などはどうだったんですか。

道幸 今までは30%ぐらいでした。去年やっと50%を超えたので、今年もさらに戻ってくるようにしたいなと思っているんですけれど。

衞藤 治療報告書というのは必ずしも義務付けられていないから、そこは残念なところですね。でも、道幸先生のところは学校としてそういうルールにしている。

道幸 そうです。

衞藤 それだけきめ細かくされれば提出率が上がり、いろんな事情で受診できないというようなケースは、どこの家庭なのかというのは明確になってきていますよね、そうすると。

道幸 幸いなことに区の方で15歳までは医療費がかからないようになっているので、おそらく病院には行きやすい環境だと思うんですけれども、なかなか。

衞藤 学校がある時間以外で受診しようと思うと、平日の夕方か土曜日の午前ですか。

叶  中学生は土日も部活入ってくるので、そうなると本当にその間をぬってというのはよほど意識が高くないと。痛まないので、放置してしまいますね。

衞藤 中学校では給食のあと一斉に歯を磨くとか、そういうことが設備的に難しいのでしょうか。蛇口の数など大丈夫でしょうか。

叶  数は少ないですが、効率良くやっています。本校はランチルームで全員が食べるので、流しもそこにあり、それでも全然足りないのですが、コップに水を汲んでおいて自分の席で磨いて、最後にすすぐだけというところだけなので、上手くやれています。磨きのこしへの指導に、中学生も染め出しをと思っていますが、歯科医の先生が熱心な方なので、歯科検診のハイリスクの生徒については2回目の検診を11月のいい歯の日近くの日程で計画しています。

衞藤 歯科医の先生が協力的なのですね。

叶  歯科検診の時も1人にかける時間を長くとり、1人ずつ保健室に入れて診ていただいています。事前に問診票に記入し、顎関節のこと、歯茎から血が出るとか自覚症状などにチェックが入っている生徒については、個別指導も少し入れてくださって。時間がかかりますが、全体的な人数が少ないので、そこまで手厚くできると思っています。