第19回「生活習慣病予防のための健康管理・指導」

■夏休みの保健指導

衞藤 私が大学に勤めていた時代ですが、学校に通っている間は指導を受ける機会があるけれど、夏休み中には手を伸ばせば好きなものを食べられるし運動もしないということで夏休みの度に肥満度が増していくというような子どもがいるということを聞いたことがあります。歯磨き指導もそうでしょうが、家庭でどういうふうに習慣が定着しているかというあたりがなかなか各家庭の協力を得ないと難しいように思いますが、そのへんの御苦労などは。夏休みの過ごし方など事前に何か指導するのでしょうか。

叶  事前にも指導しますし、夏休みの途中でも指導をします。中学生は部活動で学校に頻繁に出て来るので。毎年おこなっているのですが、部活動ごとに食事指導やケガの予防など、その時のテーマを決めています。食事指導の中心は講話と調理実習で、自分たちができるもの、自分たちが家にいる時に家にある材料で作ることができる比較的栄養バランスが良いような料理の作り方を、牛乳・乳製品関係や野菜摂取の促進をすすめる機関などにアプローチして外部の講師を招きながら続けています。子どもたちの方もそれをヒントに、少し家で作ったりはすることもできるのですが、やはり家庭の協力がないと上手くいかない部分も多く、家庭をどう引き寄せるかということが今一番の課題です。

衞藤 運動の部活動ですか。

叶  そうです。

衞藤 その子どもたちの受け止め方はスポーツがもっとより成果が上がるようにするためには栄養も気をつけなければいけないとか、そういう受け止め方ですか。

叶  それもありますが、夏休み後に運動会があったりするので体力をどう維持していくかについても考えさせます。それから、肥満とか痩せの問題についてもふれます。肥満とは逆に運動でエネルギーをたくさん消費し痩せてしまう子もいます。しかし、現実的にどのくらいそれが家庭で実践できるかというところは、少々課題があるところですが、意識付けとしてそういう取組はずっと続けてやっています。

衞藤 そういう取組を行うに当たってはなにかきっかけがあったのでしょうか。

叶  前々からそういうことができればいいかなと考えていたところに、今まで配属されていなかった栄養教諭が入るようになったのがきっかけでした。養護教諭だけじゃなく複数で取り組め、調理実習については専門的なことも入りますので分担をして指導に当たることができるという状況になりました。

衞藤 素晴らしい取組ですね。ほかに学校ではこういうのをやっていますとか何かありますか。いろいろあるところで家庭教育にどうやって踏み込むかというのは、なかなか難しいですけれど、世界的にみてもユニセフなどがやっているのは子どもたちの意識付けをして、それを地域に放って家庭の方に伝え、保護者は、子どもの言うことを聞かざるを得ないというところがあるので、大変有効なのかなと思いますけども。

木嶋 過日、そういう保護者との話し合いの場がありました。小学校3年生の保健学習では、健康に過ごすための基本的生活習慣について学習することを話しました。そこで、いろいろ家庭の都合もありますので、状況に合わせて、その家庭流にアレンジして決めていくことが大切ですということを話しました。

衞藤 保健学習というのをきっかけに家族で話し合っていただけるのは、なかなかいい取組ですね。

木嶋 少々話がずれますが、お母さんたちの話を聞いていると、結構頑張りすぎていることがうかがえます。こういうふうにさせたいとか、こういうふうにしなさいと押しつけていることが気になりました。子どもの方からやれること、お母さんもできそうなことなどお互いに無理のない計画作りをしたらどうですかと話しました。まずはできることから始めることが肝心だと思います。

衞藤 保護者の方自身も学ぶ機会であって一緒に育っていくべきだと思いますし、そうなっていくというのは、今後、学校の保健指導としては、楽しみなところでもあるのですが。