第19回「生活習慣病予防のための健康管理・指導」

■肥満と保健指導

衞藤 では、次に肥満ということで、検診で採血までしている、これは学校保健安全法の健康診断の項目を超えたものになるわけで医師会などの協力があってできているのかもしれませんが、ほかの地域で生活習慣病検診をやっていらっしゃるところありますか。

叶  今の地区ではないのですが、以前の赴任校の時には地区全体でやっていました。協力をしてくれる大学があり、私のところは茨城だったので筑波大のドクターと連携をはかり、検診をやったあとに異常があった子どもとその保護者に、適切な生活習慣について学ぶ機会や個別指導をする。その当たりのフォローまでやっていくということを関係機関との連携を踏まえ、計画的におこなう必要があると思います。

衞藤 検診というのは、そのあとの対策が用意されていないと見つけるだけでなかなか難しいですね。

叶  定期の健康診断ではないので、先ほどお話ししたような個別の指導というところが、学校の中では限界じゃないかなという気はしています。

徳冨 私の市も以前、採血等による生活習慣病予防検診が行われていたのですが数年前から採血がなくなったということがありました。採血のあとにフォローしながら個別指導や市の福祉保健センターで栄養指導等も一緒に取り組んでいたのですが、家庭的に生活習慣の改善が難しかったり、保護者がデータだけを気になさって採血の1週間前ぐらいからその時だけ食事を整えてということから予防教育に重点をおこうということで一旦終了になった現状があります。

衞藤 今、道幸先生のところではどのように生活習慣病検診の事後指導を行っているのでしょうか。

道幸 事後指導は、昨年度の例で言いますと、結果が出た時点でデータの見方と、望ましい生活として食生活について地域の保健総合センターと連携をして、全体に指導をしてもらいました。あとは要生活指導、経過観察と判定された生徒については12月の三者面談の時期を使って養護教諭と栄養士と保護者、本人の四者面談を組み込んでいます。今までの生活の見直しをして栄養士から食生活のどういうところを気にしたらいいかという話や、足立区で行っている、ベジタベライフという運動にからめて野菜から食べようというのをお話ししてもらったりします。私からは生活習慣全般、特に運動の話が多いですね。いきなり運動しようというとなかなか難しいところあるのですけれども、例えば掃除機をかけたときのカロリー消費量はこのくらいなど、そういったパンフレットを使いながら指導をしています。体重がちょっと多い生徒や脂質で引っかかってくる生徒の中には継続して見てほしいという生徒もいて、そういった意識のある生徒たちは何ヶ月後かに量ると体脂肪率、体重も減っていたりして確実に成果を上げています。中には食事日誌をすごくしっかり書いて栄養士さんに1週間に1回見ていただいて、1年後の健康診断で数値が改善していったという生徒もいます。なかなかそこまでやっていくのは難しいという生徒もたくさんいますが。
あとは区の主催で、小児の専門医による講演会や、医師や栄養士による個別相談の機会も設定されています。

衞藤 それは足立区内の他校でも?

道幸 足立区内全部です。個別指導か集団指導かは各校によりますが、基本的に事前・事後指導は行うことになっています。

衞藤 足立区としてやっているということですね。一頃、朝や昼休みなどに個別で運動指導をしたりしていたかと思いましたが、最近あまりそういうことやらないのですか。

木嶋 個別に時間を取って指導したり、お手紙を出したりすることは配慮が大事になってきますね。児童も自分だけが呼び出されることに抵抗を示しますし、保護者の方もそれを喜んでくださればいいのですが、なかなかそう受け取ってもらえないことがあります。やはり、集団指導的なことになってしまっているのが現状です。
千葉県でも何十年も取り組んでいるところがあります。先ほど、叶先生がおっしゃったように大学や地域の協力をえて、学校もその中の一つとして取り組んでいます。そういった場合は、本当に長い経緯があり、成果はきっと上がっていると思いますが、地域の差はどうしてもありますね。