第8回「学校保健委員会の立ち上げを巡って」

学校保健委員会の運営

櫻井 残念なのは、時間帯の関係で学校保健委員会に生徒を入れられないということです。大体、平日の午後の時間帯に開催することが多かったのですが、その時間には生徒は授業をしています。進学校だった前任校では活発に保健委員の活動をしていましたが、それを学校保健委員会の場で発表することが結局できませんでした。
 その後、転勤した学校が工業高校で、今度はほぼ就職という学校です。4時まで授業をすることはありませんが、3時半くらいに授業が終わると、ほとんどの生徒がクラブに行ってしまうような学校ですので、また違う作戦を立てなければいけないなと思っているところです。

増山 中学校も高校も確かに部活がありますね。小学校ではそれはないので放課後の1時間を設定しています。石けん交換などの常時活動をする保健委員会とは別に、児童保健委員会という学校保健委員会の活動をする委員会があります。学校保健委員会のテーマに向かって活動する委員会が児童保健委員会で、この委員会で調査した結果やいろいろな活動内容を報告し、保護者や先生方、校医さん、子どもたちと一緒に、ここはまずいよね、今年はこうしていこうねというような話し合いをする場が学校保健委員会になっています。

櫻井 今、増山先生からメンバーの話がありました。学校保健委員会のメンバーとしては、今の学校は教頭が全日制に2人いることもあり、教頭や学年代表がみんな入るだけで大人数になります。また、学級担任を持たないで保健部に所属している保健部専任という先生方もいます。その先生にも会議に入ってもらうというと、本当に大所帯になります。そのメンバーが会議にどんと入ると身内がいっぱいの会議になりがちなのです。メンバーの選び方によっては会議的な委員会になりやすくなることがあるとも思っています。
 小学校や中学校のように子どもたちが主体になって考えるとか、学校保健委員会の中で子どもたちの気づきがあって、それを次につなげていくというものにすることが難しい状況です。
 ただ、高校の学校保健委員会の意味があるなと思うところは、職員が百何十人といるの中で、先生方や各学年の先生に保健部は今こんなことを考えているということを示すことができるということです。
 本当はさらに地域にも手を伸ばしたいと思っていますが、高校は校区が広いこともあり、地域の方の参加してもらうことが企画倒れに終わってしまうことがあります。

増山 横浜市は小中一緒に学校保健委員会を開いている学校もありますが、学区があるのとないのでは全然違いますね。小中連携と横浜市は言っているので、同じテーマにして中学校の子たちが調べてきたものを小学校に教えに来てくれたり、小学校の子どもたちが中学校の学校保健委員会に一緒に参加するなど先進的に頑張っている学校もあります。自分たちのブロックも「お互いにやれたらいいね」と言いながらも、テーマは全然違うなどなかなかうまくいかなくて、取りあえず養護教諭同士がお互いの学校保健委員会を見にいくことをしました。違う学校の学校保健委員会を見せてもらうのも参考になるなと思いました。

濁川 桐生市は学校保健委員会をすごく大事にしていて、すべての先生方が移動学校保健委員会といって学校保健委員会を見学させてもらえるシステムがありました。ですから、早いうちから学校保健委員会が立ち上がっていたのです。輪番で移動学校保健委員会があたりますが、それがイベントになってしまい、輪番の年にはものすごく一生懸命やるのです。現在では行っておりません。その代わり自分の学校で地道に継続できるようにしましょうとなったのです。
 しかし、よその学校の学校保健委員会を見せていただくと、参考になるところがたくさんありました。ほかの学校保健委員会を見るということはいいことだなと今になって思います。若い方にはすごく良かったのではないでしょうか。今はどこの学区も設置率を見ると90%近くなのですが、その中で養護の先生が1人で孤軍奮闘しているのが見えます。学校保健委員会を活性化するには、お互いに見合うことも大事かなと感じます。

櫻井 三重県の設置率は100%ではありません。去年の三重県の設置率は小学校は大体90%、中学校は91%、高校と特別支援学校が100%で、全体としては91%の設置でした。ただ、設置した91%の中でも7%の学校は開催できていないのが現状です。残りの93%は、開催はしていますが1回の開催が6割です。2回が19%、3回以上のところは14%でした。1回開催している学校は、まだ養護教諭になったばかりとか、講師の先生に開催してもらっている学校もあるので、その場合は、去年に沿って行うという形になりがちなのかもしれません。
 小中学校の先生方は市の中で、例えば教育委員会なり養護教員の研究会のようなものが中心となって隣の小学校へ見にいくなどの機会もあるのかなと思います。うらやましいと思いますが、現実は見にいくことはそんなにできないのでしょうか。

増山 子どもがいる時間帯に学校を出てほかの学校に行くのはなかなか難しいところもあります。

濁川 管理職の考え方で変わりますよね。私の学校の校長先生は県のスポーツ体育科におられた方なので、1回でなくてもっと開こうと言ってくださるのです。講演会ではなく、討議できるものにしようとか、校医さんだけではなく学校評議員の先生にもオブザーバーで見てもらおうということで、去年から来ていただいています。また、話し合った内容が地域に下りるには町会長さんなどがいた方がいいのなら、評議員さんを呼ぼうよなどと、いろいろ考えてくださるのでとても助かっています。

櫻井 積極的に開催しようとする気持ちは嬉しいですね。高校では学校で取り組みたいことの優先順位で、健康問題がどんどん下がる傾向があると思うのです。健康の上に、例えば進学率、就職率、検定の取得等たくさんあって、さらに最近の不審者事案とか、生徒指導で制服が乱れてきたといった方にすごく力を入れがちではありませんか。しかし、その中で基本に戻って、こういうところがすごく大事だと訴えていくのが専門職としての私たちの務めかなと思うのです。今、自分たちの学校でできる最善のことは、学校保健という気持ちを先生たちにベースに持ってもらえるようなことで頑張るという感じかなといつも思っています。

増山 学校保健委員会は絶対やらなければならないもの、やるのが当たり前だということがかなり定着してきていますよね。それが逆にプレッシャーになっていましたが、あらためて先生たちに堂々と保健のことを話せる時間を作ってもらえる会だなと思いました。小学校でもやはり日々の行事に追われて先生方は忙しいのです。健康のことはつい後回しになりがちなのですが、「学校保健委員会があるので・・・」というバックがあると、調査に協力してもらったり、クラスで取組をしてもらったりなど逆にお願いしやすい部分もあると思います。

衞藤 私は7年ほど、国際協力機構(JICA)の海外の学校保健の研修で学校保健委員会と学校医の話をしています。西アフリカや太平洋の島などで日本の学校保健委員会の話をすると、そういう制度があること自体がうらやましいと言われます。