第14回「薬物乱用防止の指導」

5 薬物乱用防止教室の実践経験から〜連携の取り方〜

■講師の人選と上手な連携の取り方

並木 それでは次に赤井先生はいかがでしょうか。

赤井 先日、全国の小中高の薬物乱用防止教室の実施状況が報告されていました。いろんな行事や予算のことがある中、全ての学校が毎年行うのは大変だと思いますが、どんな方法であれ、行う必要があるのだと思いました。
ここ数年の薬物乱用防止教室は、いろんな専門家の方に来ていただいています。事前に実施についてのポスターを掲示し、生徒の意識を高めたりしながら、地域の生徒指導協議会に配ったところ、外部からも多く来てくださいました。感想文には「薬物に手を出そうとしている友達がいたら止めたい」と書かれたり、それをまとめた保健室便りを読んでくれる子もいたりしたので、生徒の心に響いたのではないかと思っています。
脱法ハーブが流行りはじめた頃は、子どもたちも「お香」だから警察の取り締まりもないと言っていました。私たちも知識不足ですし、警察や精神保健福祉センターやその他関係機関にも相談に行きましたが、具体的な手立てが見出せず、生徒の情報を抱え込むような状況が出てきました。全体と個への対応について、どのように組織的に取り組んでいけばいいかが大きな悩みでした。
薬物乱用防止教室の講師は、保護司、精神科医や麻薬取締官等にお越しいただいたのですが、薬物問題の現場で携わる方による写真や映像を用いたお話は本当に生々しくて、生徒の感想文にはその恐ろしさや、いかにも普通の街並みで取引があることへの驚き等が書かれ、現場で携わる方の実話はそのまま生徒の心に届くということが分かりました。
また学校の近隣にハーブが売られていそうなショップがあることも問題視されていましたので、保健所に相談したこともありました。後で立ち入り調査をされたということを聞きましたが、地域の保健所に相談したりご協力いただいたりすることは大切な手段だと思います。

■ダルクとコラボレーションするには

並木 ダルクの先生を招くことについては、どのようになさっていますか。

鬼頭 まず、ダルクの誰に来てもらうかは慎重に検討し、管理職ともよく相談してからにすべきと考えています。子どもにとって、時として本当に格好よく映ってしまい、悪い意味で薬物をやってもやめられるのだ、ああいうふうに格好良くみんなの前でしゃべれるのだというイメージを持たせてしまうので 危険だからです 。
それから、先ほど赤井先生が麻薬取締官とおっしゃいましたが、実際のところ現役の麻薬取締官が来ることは、難しいと思います。薬物乱用防止教室へ行くのは麻薬取締官OBですが、現場での話や薬物乱用の本当の怖さを目の当たりにしている方々なので、子どもにとっては大変インパクトのある話が聞けると思います。また、何か問題が起こった場合には、麻薬取締官は守秘義務を優先すると言われています。
兵庫教育大学は教員養成系の大学なので、教員になる人には薬物乱用の怖さを教えてほしいということで、そうしたところと連携した取組をはじめているところです。

嶋根 ダルクとのコラボレーションで大事なことは、講演会の組み立て方だと思います。ダルクに丸投げはよくありませんね。事前に綿密な打ち合わせをして、役割分担を決めておくことが重要だと思います。
私がダルクの方と一緒に講演するときには、生きづらさや薬物に手を出してしまったときの心の状態など、「当事者でなければ話せないこと」を中心に話してもらいます。ただ、当事者の語りだけでは、理解が不十分な可能性もありますので、当事者の体験談の前後には、私が全般的な話や、体験談を補うような話を入れてバランスを組み立てています。当事者の言葉って、本当に心に響くものですから、重要なことはその活用の仕方だと思いますよ。

並木 私は成田の税関のモニターをしたことがあるのですが、あそこには麻薬犬がいたりするので、そのあたりを活用すると小学生などは喜ぶと思います。小学校での人選について、群馬の事例はありますか。

植木 県の少年育成センターがキャラバンカーを用いた小学生用の指導内容も作ってくれているので、そこに相談する学校も多いです。あとは、学校薬剤師の先生やライオンズクラブの方、保健福祉事務所の担当者など、講師として登録されている方を呼んでいるのが実態です。