第3回テーマ「学校での応急処置・対応」
  • 学校での運動器(四肢・脊椎・骨盤)の外傷
  • 宮崎大学医学部 整形外科 帖佐 悦男
図1:負傷における種類別発生割合 図2:負傷における部位別発生割合

学校の管理下における災害のうち、学校種が上がる程、比較的軽度な打撲・挫傷から症状の重い捻挫・骨折へ発生割合が移行している。どの学校種でも部位別には、上肢・下肢で約3分の2を占めている(図1、2)。その中でも手・手指部が最も多く、次に足関節部・足趾部が多い。運動器(整形外科)疾患の外傷(ケガ)が起こった場合には、損傷部位の障害を最小限にとどめるために応急処置(RICE処置)を行う(図3)。ただし、麻痺、変形、開放骨折(キズを伴う骨折)やコンパートメント症候群などを認める場合、重篤な後遺症をきたすことがあるので直ぐに医療機関受診を行うなど早期の適切な対応が必要である。

図3:応急処置の基本はRICE処置

外傷の対応  外傷には、打撲、捻挫、骨折、脱臼などがある。症状として、受傷部の腫脹(脹れ)、疼痛(痛み)などを認める。症状の悪化を防ぐことと早期回復を目的として応急処置を実施する。ただし、麻痺、変形、開放骨折などを認める場合、応急処置に加え救急車を呼ぶなど早急な対応が求められる。
打撲(打ち身)
打撲は、身体を人や物にぶつけることで生じる。

図4:捻挫 図5:突き指(打撲、腱損傷、骨折、脱臼)

捻挫・脱臼・骨折(図4、5)
捻挫とは、外力によって関節包や靭帯(じんたい)の損傷が生じ関節が生理的可動域(普通に動く範囲)を超え、一時的に関節面の相互関係が壊れるが元に戻る(変形を残さない)状態をさす。一方、脱臼は関節面の相互関係が壊れたままであり変形を認める。骨折は、外力により骨が変形・破壊をおこし連続性が絶たれた状態をさす。特に手関節、手指は競技中に他の物に接触しやすいため障害を受けやすい。また、ケガをした直後は単なる打撲や捻挫と思っても骨折などを伴うことがあるので注意する。疼痛が著明であったり変形を認める場合、添え木をあて疼痛のないよう固定し、医療機関を受診させる。特に、起立位がとれない場合は、下肢の脱臼・骨折の可能性が高いため救急隊へ連絡する。
「運動器疾患の外傷への対応」
運動器疾患の外傷が発生した場合、応急処置(RICE処置)を実施する(図3)。RICE処置とは、ケガの応急処置の4つの原則(安静:Rest、冷却:Icing、圧迫:Compression、挙上:Elevation)の頭文字をとった言葉である。受傷直後からRICE処置を実施することで、腫脹を軽減し止血や疼痛の緩和効果があり、損傷範囲の悪化を予防し早期治癒や後遺症の発生を減らすことができる。具体的には、受傷部の安静(包帯、三角巾、サポーターや添え木による固定)、冷却(タオルをあて、その上から氷・アイスパックで冷す)、包帯などで圧迫し、受傷部を心臓より高い位置に挙上する。注意点として、創傷がある場合実施しない、アイシングの目安は15-20分で、感覚が麻痺したら中止する(凍傷予防のため)、血行障害防止のため圧迫し過ぎないなどである。
痛みの原因が打撲か骨折、捻挫や脱臼によるものなのかの判断が必要である。RICE処置で改善しない場合、骨折や靭帯損傷などを伴っていることがあるので直ぐに医療機関を受診させる。
次に、緊急を要する場合について述べる。
麻痺を認める場合
麻痺(手足のシビレや四肢を動かせない)は、ラグビーやフットボールなどのコンタクトスポーツ,水泳の飛び込み、柔道、ハンググライダーや体操競技での落下による脊椎の脱臼・骨折や四肢の脱臼・骨折により生じる。麻痺のため動けない場合、その場を動かさず直ぐに救急隊へ連絡する。
創傷・開放創(キズ)を認める場合
対処法として、(1)直ちに水道水などの流水で十分に洗う。(2)キズ口をこすると血が止まらないのでこすらない。(3)出血部位を清潔なタオルなどで圧迫する。但し、数分で血が止まらない場合、出血部の圧迫または出血部位より心臓側を緊縛し(縛り)医療機関を受診させる。
特に開放骨折(開放創があり骨折部が皮膚の外とつながっている)の場合、骨髄炎(骨の感染:治療が困難な感染)のおこる可能性が高いので緊急の対応が必要である。
コンパートメント(筋区画)症候群(図6)
頻度は少ないが、スポーツなどによる打撲・骨折後、腫脹のため組織の圧が上昇し、筋や神経の血行障害を引き起こし、壊死(えし)や神経麻痺を生じるため緊急を要する疾患である。下腿(すね)の前方が最も多い。特にシビレや運動麻痺があり指・足趾を動かすことで疼痛が増強する場合は本疾患を疑い、直ぐに医療機関を受診させる。

図6:コンパートメント症候群