第16回「今後の健康診断」
 

 学校健康診断の歴史は古く明治期まで遡れます。トラホームやむし歯などの改善に学校での健康診断が果たした役割は大きいものがありましたが、時代によって健康問題は変化し、それと共に健康診断の内容も変わってきました。
文部科学省では、平成6年に改正された現在の検査項目を近年の健康問題を踏まえて見直すため、平成24年5月から25年12月まで9回にわたって「今後の健康診断の在り方等に関する検討会」を開催し、このたび検討会での意見がまとめられました。
そこで、今回の特集では、今後、学校健康診断がどのようになっていくか、文部科学省スポーツ・青少年局の知念希和・学校保健対策専門官に伺いました。

(聞き手/公益財団法人日本学校保健会事務局)

知念希和・学校保健対策専門官
インタビュー:知念希和・学校保健対策専門官
(文部科学省スポーツ・青少年局)

1.今後の健康診断のあり方等に関する検討会をふまえて

2.個別の健康診断項目の見直し

3.健康診断の各分野の課題

4.これからの流れ

今後の健康診断のあり方等に関する検討会をふまえて

まず、検討会に至るまでの経緯をお聞きしたいのですが。

歯の検査

 学校の健康診断については、平成6年に検査項目の大幅な改正が行われましたが、それから20年近く経過し、子どもたちを取り巻く社会環境の変化と共に子どもたちの健康課題も変わってきています。そこで文部科学省では今後の健康診断の在り方を検討していく上で、平成23年度に幼・小・中・高・特別支援学校の約1万校を対象に「今後の健康診断の在り方に関する調査」を日本学校保健会へ委託し、その調査結果をとりまとめました。そして、平成24年5月から、「今後の健康診断の在り方等に関する検討会」を開催しました。

今後の学校の健康診断での留意点をお願します。まず、学校健康診断の目的と役割についていかがでしょうか。

 学校の健康診断の目的および役割は、子どもが学校生活を送るにあたり支障があるかどうかのスクリーニングと、その学校の健康課題を明らかにし、健康教育に役立てることの大きく二つがあります。学校での健康診断は、病院での診断と違って、確定診断ではないことについて、保護者の方々や学校関係者と共通理解を図り、認識をもってもらうことが重要です。また、健康診断の結果を基に、肥満傾向やむし歯の状況など、学校全体での健康課題を把握し、健康教育へとつなげてもらいたいと思います。

スクリーニング

健康診断の実施体制についてはいかがでしょうか。

 健康診断の実施体制ですが、平成23年度の調査では、各家庭への保健調査が健康診断時に十分に活用されていない実情がみえてきました。効果的な健康診断を行うためには、保健調査や学校生活管理指導表で子どもの健康状態を把握し、疾病や課題があれば事前に学校医、学校歯科医へ相談するなどの準備が重要です。また、保健調査等を通じて保護者から情報提供をいただくことは、保護者の健康意識を高めることにもなりますので、事前準備をしっかり行い、保健調査等が十分に活かされるような体制づくりに取り組んでいただければと思います。ただ、その際には、養護教諭だけで対応するのではなく、管理職の指導の下、保健主事や担任とも連携し、学校全体として健康診断に取り組むことが求められています。

事後措置についてはいかがでしょうか。

 学校の健康診断は、全ての検査項目について、異常や健康課題についてスクリーニングを行い、その結果が適切に活用されることに意味があります。児童生徒や保護者に対する事後措置はもちろんのこと、学校全体の健康課題について、学校関係者と学校医・学校歯科医・学校薬剤師の学校三師、保護者が連携して対応していく体制の構築が大切です。更には、地域全体として健康課題に取り組むという観点で、三師以外の専門医や医療機関、保健所などと連携して取り組むなど、より地域に根ざした健康教育も期待されます。

そのほかになにかありますでしょうか。

 検討会では、就学時健康診断の情報が入学校で十分に活用されていない、学校での健康診断の結果が卒業後に活かされていないという意見がありました。少なくても義務教育である小学1年から中学3年までは学校の健康診断を受けているわけですから、その貴重な情報をその後の人生に活かせるように個人に還元することが考えられます。たとえば母子手帳のような継続型の健康手帳の活用などこれからの検討課題の一つです。また、子どもの健康情報を活用することにより、健康への保護者の関心が高まり、家庭での健康意識の向上も期待されます。

眼の検査