第10回 児童生徒の保健委員会活動事例
 

主役は生徒です

筑波大学附属中学校 近藤とも子

「保健室が動いている」

 これは、本校に在職し、後に養護教諭養成課程で教鞭を執られた元副校長が、大学講義の教材用に保健室の様子をビデオに収めていた際にもらした言葉です。
 「生徒たちが保健室に頻繁に出入りをし、積極的に活動している(保健委員)姿がとても生き生きしていて…人が絶え間なく行き来をし、手当てをし、あわただしく教室へ戻っていくという一部始終を見ていると、皆の目が輝いているのがわかりました。」
 これは、研修のために来校した養護教諭を志す学生のレポートの一文です。
 本校は、東京文京区に位置する生徒数615名(各学年5クラス)男女同数の学校です。
 生徒保健委員は、各クラス男女各1名総勢30名で構成されています。活動の企画・運営を担当するメンバーが、委員長、副委員長(2名)、会計の4人です。本校では三役と呼ばれ、委員会の核を成しています。

 以下は、現在保健委員会の代表をしている生徒の記述です。

主役は生徒です

 本校では、先生がすべてを教えるのではなく、生徒自身に「じっくり考える」ことをさせてくださいます。「生徒が主役」これが、最大の特徴です。
 健康・安全上の問題点を見つけ、対策を考え、活動に移していくことは簡単なことではありません。しかし、良い結果が得られたとき、やりがいを感じることができます。もちろん辛いこともありますが、楽しいことも多いです。活動した結果、目標が達成されたときの喜びは、何ものにも換えられません。ですから、辛いことも後で振り返ってみれば良い思い出になります。
 11月、三役に立候補後、前三役の面接を経て、12月の立会演説会後に選挙で選出されてから、前三役からの引き継ぎなどすぐに準備が始まります。
 『この1年間、どんな活動をしていくのか』
 三役の初仕事は、1年間の活動をイメージし、1年間の活動の方針、重点活動を決めることから始まります。そして、毎週1回行われる委員会を計画的に運営していくための三役会合があり、その会合から保健委員会のすべてがつくられます。

活動の一部です

(1)総合健康診断の行事を企画・運営する
 4月の総合健康診断(全生徒を対象に1日で実施する)は、保健委員会が企画・運営し、全校生徒にメッセージを伝えることができる行事です。2月から準備に入りますが、前日までの準備、前日の会場設営、当日の運営など生徒が主体的に行事をつくります。また、健康についてのプレゼンテーションを劇などで発表し、全校生徒自身に健康の大切さを考えてもらいます。

 

総合健診プレゼン

総合健診・保健委員の活動

 

(2)宿泊行事をサポートする
 宿泊生活を健康に安全に何より有意義なものとするために保健委員はケガ、病気を未然に防ぐための方策を考えます。寝不足やケガ防止の呼びかけのためのポスターを作成したり、登山の時の熱中症対策をしたりします。例えば塩を休憩中に配るといったユニークなことです。現地では、保健係をリードし、ケガ人、病人を出さないよう、保健委員、保健係の合同保健会議を開いて、「健康・安全」のサポートの輪を広げます。

(3)夏休みも活動する
 夏休みには、運動会と学芸発表会(文化祭)の準備をします。運動会については後で詳しく述べますが、学芸発表会は毎年、健康に関係するテーマで展示発表を行っています。ちなみに去年のテーマは温泉、今年のテーマは食事です。例年、劇や体験コーナーなどを設けるなど工夫をこらして、来てくださった方自身も健康について考えてもらえるような展示を心がけています。

(4)後期の活動は心のケアについて学ぶ
 後期は、「心の処方せん」活動といって、保健委員として、クラスメートをしっかりサポートできるよう、サポートスキル・トレーニングの学習を積みます。

 その他、学校内の環境について保健委員自らの目でチェックし、全校に呼びかけをしたり、インフルエンザ流行期、登校時に手洗いの呼びかけをしたりします。日常的にはケガ人、病人を保健室に連れて行き、先生の処置や記録のお手伝いをしたり、月に一度体重測定をして生徒自身の健康を見直してもらったりもしています。

 そして、12月、次の代へバトンタッチをします。
 新三役が決まってからの1月から3月は、引き継ぎを行うための大切な期間です。そして、1年の活動が始まる時期です。

救急活動で終わりません



運動会のケガ防止呼びかけ
(写真上・下)

 保健委員会が主体となって運営する行事は前述した総合健康診断があり、この行事もやりがいを感じますが、僕自身、1番やりがいが感じられるのは運動会です。保健委員をやっていてよかったと思うところは、頑張ると、それがそのまま全校生徒に反映され、自分が取り組んだ結果が、ケガ人の人数として表れて見えることです。
 10年以上前、運動会で保健委員の活動は、運動会当日の救急活動の準備と実際が主でした。その後、運動会でのケガ人、熱中症などの病人を減らしたいという願いを持って、活動内容が充実してきました。

 そのきっかけをつくったのが、保健委員の先輩たちです。保健委員会では、先輩たちの熱い思いと具体的活動方法とがしっかり伝承されてきました。

 


運動会当日「がんばるぞー!!」

 今年は、全校生徒が全力で運動会に参加できるように、毎年問題となっている「肉離れ」などの筋肉損傷の人数を減らしたいという思いから、準備運動に新たな運動を加えることにしました。より効果的な準備運動の方法を取り入れる目的で、保健体育科の先生にも相談し、ご指導いただきました。前年度の先輩から引き継ぎ、今年度はさらにパワーアップを図って取り組んだ結果、前年度の筋肉損傷は28人でしたが、今年度は8人と効果を上げることができました。それがわかったときはとてもうれしかったです。これは僕たちの成果だけではなく、今までの先輩たちから引き継いでくれたことがあったからこそ僕たちがこのような結果を残せたと思います。

 


運動会を終えて

 

 以上が生徒の記述です。
 本校の学校保健活動は、生徒保健委員抜きには語れません。
 「生徒と共にある、共に歩む。」
 これが、本校の学校保健活動といえるのではないかと考えています。

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