学校での心臓検診・腎臓検診

2.心電図検査について

Q.学校での心電図検査の意義について教えてください。

A. 学校での心電図検査は、

  • <1> 心疾患の発見、早期診断
  • <2> 心疾患をもつ児童生徒に適切な治療を受けさせるように指示する
  • <3> 心疾患児に日常生活の適切な指導を行う。児童生徒のQOLを高め、生涯を通じてできるだけ健康的な生活を送ることができるように児童生徒を援助
  • <4> 突然死の予防

など、児童生徒にとって重要な役割を担っています。また、検診を通して、心臓や心臓病がどんなものかなど健康教育を行うことも児童生徒にとっては重要な目的と考えられます。

Q.心電図検査において12誘導と省略4誘導の違いについて教えてください。特に、省略4誘導でわからないことはあるのでしょうか。

A. 省略4誘導心電図は、心音図と同時記録することを考慮して始められました。心音図のマイクは胸部誘導のV2、V3、V4あたりに装着されるため、心電図でこれらの誘導を同時に記録することができません。昭和30-40年代に学校心臓検診として省略4誘導心電図が導入された地域では、現在でも省略4誘導心電図が使われているところがほとんどです。省略4誘導心電図は、心電図の電気軸(心電図の向く方向)、心臓肥大の有無、心室期外収縮などを見つけることができるため、心臓に負荷のかかるような心疾患がないかどうか、簡単な不整脈のスクリーニングが可能です。しかし、心房中隔欠損では、V3、V4誘導のT波の変化が重要であり、また近年話題となっているBrugada症候群ではV2誘導のSTの変化が特徴的であり、QT延長症候群でもV5誘導でQT時間を計測することが一般的になってきています。

以前は心音図を記録して、先天性心疾患を発見することが学校心臓検診の主な目的であったため、心音図の同時記録が学校心臓検診の重要な役割でした。しかし、現在では、主な先天性心疾患は学校心臓検診以前に発見されることが多く、学校心臓検診で発見されることの最も多い先天性心疾患である心房中隔欠損の発見のためには12誘導心電図が向いており、近年新しく発見された不整脈診断に対しても12誘導心電図が必要なことから、今後は12誘導心電図記録を行うことが推奨されています。

Q.学校の心電図検診で異常と判断された場合、どのような不整脈の種類があって、それぞれどう対処すればいいでしょうか。

A. 心電図異常には不整脈だけでも多くの種類、対処法があり、一概に述べることはできません。1次検診から2次検診へ抽出する心電図検査の異常は、心臓肥大が疑われる場合、不整脈がある場合など多くの項目があります。2次検診では治療が必要かどうかを判断します。以下に、心電図の異常を認めた場合に速やかな専門医療機関の受診を考慮しなければいけない所見を表にまとめてみました。

項目 内容
QSパターン 胸壁上右隣の誘導に初期Rがあるとき
I、II、V6、(IIIおよびaVF)のいずれかにみられる場合
V1〜V4のいずれにも見られる場合
明らかな右室肥大所見 点数制による右心室肥大判定基準で5点以上
明らかな左室肥大所見 点数制による左心室肥大判定基準で5点以上
高度ST低下 ST-J降下≧0.2mVでT波陰性または2相性で陰性部分≧0.5mVがみられる。(I、II、aVF,、V1〜V6のいずれか、T波はV3〜V6)
左側胸部誘導の陰性T波 V3〜V6誘導(小学生ではV4〜V6誘導)にみられる場合
第2度房室ブロック Mobitz型
2:1ブロック
第3度房室ブロック 高度房室ブロックを含む
完全左脚ブロック 該当する心電図所見
多形心室期外収縮 心室期外収縮の波形が多形性を示す場合
2連発以上の心室期外収縮 心室期外収縮が2連発以上連続して出現する場合
R on T心室期外収縮 心室期外収縮がR on T型を示す場合
後続心拍にT波以上を伴う心室期外収縮 心室期外収縮が後続心拍にT波の異常所見を示す場合
心室頻拍 多形心室頻拍を含む
心房細動・心房粗動 該当する心電図所見
上室頻拍 該当する心電図所見
洞房ブロック 該当する心電図所見
QT延長 接線法で測定しFridericia補正したQT時間が次の値を超える場合
小学1年生男女:0.430、中学1年生男女:0.445
高校1年生男:0.440、高校1年女:0.455
Brugada様心電図 右側胸部誘導V1,V2,V3のいずれかで、J点で0.2mV以上STが上昇し、かつST-T部位がCoved型またはSaddleback型をとるもの
その他 調査票などで上記に準ずる突然死の可能性のある所見あるいはその既往があると考えられる場合