学校での心臓検診・腎臓検診

2.学校検尿について

Q 学校検尿の意義について教えてください。

A. 学校検尿では、小学生で1万人に3〜5人、中学生で5人〜10人の慢性腎疾患が発見されています。その「蛋白尿+血尿」の所見で慢性腎疾患が発見された70%がIgA腎症です。IgA腎症は人工透析が必要となることがある慢性糸球体腎炎の一つで最も多く見られます。しかし、早期発見、治療すれば慢性腎炎を予防することが可能です。特に蛋白量が多いと予後が悪い傾向にあります。最近は治療法が進歩し早期発見、早期に治療すれば治癒したり、腎不全に成るのを防げられますので、その子どもの将来にとっても大切なものとなります。
 我が国で人工透析を受けている患者は30万人を超えています。糸球体腎炎の人工透析導入者の年齢分布で1999年の学校検尿世代と1983年の学校検尿世代を比較すると、45歳以下でのみ有意に改善傾向がみられました。これは学校検尿が透析導入者数の減少に役立っているということでもあるのですが、年間に数百万の医療費を要する透析患者が減少すれば、将来的にはかなりの医療費削減にもつながります。

管理指導表の診断名
学校生活管理指導表を学校に提出した腎疾患のある児童生徒の診断名からみた傾向

 

Q 中学校ですが、起床時の尿がとれなくて、その後の尿を提出してくる生徒がいます。「蛋白尿がでる可能性が高くなる」という理解でいいのでしょうか。

A. 最初にも説明しましたが、中学生頃の子どもは起きた直後の採尿でないと、尿中に蛋白が所見された場合、「体位性蛋白尿」を否定することができず、再検査が必要になってきます。体位性蛋白尿は健常者の10%、検尿陽性者の20〜40%を占めるといわれています。可能なら別の日に提出してもらうのが良いですが、運営上無理な場合は、検尿に出さないよりは出す方がいい。そんな場合は、排尿した後、コップ一杯の水を飲んで、椅子などに座って2時間程度安静を保ったうえで採尿してください。また、定時制の高校では、登校時間の関係で第一尿を採取していてもかなりの時間が経ってから学校へ提出することになるのですが、常温で保管していると採尿内に細菌が増殖し、それが原因で陽性が出やすくなります。生徒に学校へ持ってくるまで冷蔵庫で保管するよう指導するのも難しいと思いますので、冷蔵保管ができない場合にも上述のように学校で採尿する方がいいかと思います。

 

Q 微少血尿で特に感じることです。兄弟で判定される例が結構あるように思いますが、遺伝するものですか?

A. 2年以上血尿がみられる30%〜40%に家族性血尿の人がいます。家族性血尿は遺伝性で、ご質問のように兄弟間でよくみられることは確かです。例えば上の子に血尿の所見が出たけれども、下の子には出なかったということもありますが、家族性血尿には軽いものが多く、家族性血尿であっても検尿では捉えられない人もいます。家族性血尿には良性と悪性があり、ほとんどの人が経過観察で治療まで行かない良性ですが、腎炎など重い腎臓疾患のある方が家族にいたり、難聴の症状や蛋白が所見された人は治療が必要になる場合がありますので、医療機関で検査を受けるようにしてください。

血尿の経過観察
 
専門医紹介基準の作成