第15回「冬の乾燥と皮膚」
 

1.手指のトラブル

2.そのほかの皮膚のトラブル

Q-1 冬場に乾燥肌が起こる原因と予防法、症状の改善法などを教えてください。また、皮膚の正しい保湿の方法、してはいけないことがあれば教えてください。

Q-2 寒冷蕁麻疹というのはどういうものでしょうか。予防やケアの方法がありましたら教えてください。

Q-3 本校には、数名、アトピー性皮膚炎の子どもが通っています。そこで、特に冬場にアトピー性皮膚炎を悪化させないためのケアの方法などはありますでしょうか。

Q-4 冬になると毎年唇が乾燥してひどいと先のほうが割れる子どもが保健室へやってきます。私自身も悩んでいるのですが、やはりリップクリームが一番のケアなのでしょうか。また、リップクリームにも色つき、匂いつき、光沢つきなど様々な種類があり、なかには、下手に使うよりは使わずにいる方がいいのではと思うときもあります。子ども用にはどのようなものがいいのか、また、大人が使うにしても注意点などありましたら教えてください。

Q-5 冬場のかかとの荒れやひびなどの予防や対応について、中高校生(場合によっては小学生も)が簡単にできることがあればご教示ください。

3.スポーツと皮膚のトラブル


2.そのほかの皮膚のトラブル

Q-1 冬場に乾燥肌が起こる原因と予防法、症状の改善法などを教えてください。また、皮膚の正しい保湿の方法、してはいけないことがあれば教えてください。

A. 冬場に乾燥肌が起きる原因は,湿度が低いためです。ちなみに雪が積もる日本海側では湿度がそれほど低くならないことから乾燥肌が生じにくいとも言われています。乾燥すると,かさかさして粉を吹いたようになります。このまま放置しているとかゆみがでてきて,赤いぶつぶつとした湿疹になります。かゆいからと言って,孫の手やタオルなどで強くこすってはいけません。かいたりこすったりすると皮膚のバリアが壊れて,より乾燥が進みます。
 乾燥肌を予防するには,日頃から保湿クリームや乳液を使用することをおすすめします。朝晩1日2回の使用がよいでしょう。特に入浴後の塗布は,お湯から出て15分以内が効果的とするデータがあります。
 乾燥肌であれば,保湿クリームで治療が可能ですが,湿疹ができてくると,病院で湿疹の薬をもらって毎日使用することが必要になります。また,症状がよくなっても予防的に保湿クリームを継続してください。
 保湿クリームには、<1>水分を保持する作用のあるもの、<2>皮膚のバリアの成分を補うもの、<3>皮膚を覆ってバリアの代わりをするものなどがあります。<1>には、尿素やアミノ酸,コラーゲンなどがあり,これらは天然の保湿因子となって、皮膚の水分を保持する働きがあります。尿素には、角質を溶かす作用があるので、手や足などの皮膚の厚い部分を滑らかにする働きもあります。<2>の代表は、セラミドで、<3>の代表はワセリンやボディーオイルです。ワセリンやボディーオイルが皮膚内の水分を蒸発させないよう油分の膜で皮膚表面の乾燥を防ぐフタのような役割であるのに対して、セラミドは皮膚の穴をふさいでバリアを補強して皮膚内の水分を保つ効果があります。

Q-2 寒冷蕁麻疹というのはどういうものでしょうか。予防やケアの方法がありましたら教えてください。

A. 寒冷蕁麻疹は、温度の変化によって生じる比較的珍しい蕁麻疹の一種で、例えば腕に四角い氷を載せると,その部分にのみ蕁麻疹ができます。寒冷蕁麻疹の場合は、予防的に抗ヒスタミン薬の内服を行います。また,急激な温度変化を避けることが大切です。

膨疹

   蕁麻疹は、皮膚内にある肥満細胞からヒスタミンが分泌され、皮膚にかゆみがでたり、「膨疹(ぼうしん)」という虫刺され様の状態になったものをいいます。ヒスタミンが分泌される原因には、急な温度変化や物理的圧力などの刺激によるものがあります。例えば、寒冷蕁麻疹は急な温度変化で起こる蕁麻疹ですが、ゴムの下着の締め付けでできるみみずばれは、皮膚に圧力がかかって起こった物理的刺激による蕁麻疹です。
 また、サバなど青魚を食べて蕁麻疹を起こしたということをよく聞きますが、これは青魚に含まれているヒスタミンが原因です。ちなみに、青魚は古くなればなるほど醗酵作用によってヒスタミンが多くなりますので、青魚で蕁麻疹を起こしやすい方は、気をつけてください。

 

Q-3 本校には、数名、アトピー性皮膚炎の子どもが通っています。そこで、特に冬場にアトピー性皮膚炎を悪化させないためのケアの方法などはありますでしょうか。

アトピー性皮膚炎

A. アトピー性皮膚炎には,ダニやハウスダストなどに対するアレルギー反応の側面と,皮膚のバリア機能低下に伴って生じる側面があります。特に冬には,皮膚が乾燥して,皮膚のバリア機能が低下しやすい環境にあります。アトピー性皮膚炎のあるお子さんは皮膚が乾燥すると悪化するので、特に保湿を心がけるようにご指導ください。冬は,お風呂上りに冷えないようにすぐに服を着てしまいがちですが,水けをふき取った後に保湿クリームの外用を行う習慣をつけていただくとよいでしょう。薬の保湿剤もありますので、医療機関へご相談ください。

Q-4 冬になると毎年唇が乾燥してひどいと先のほうが割れる子どもが保健室へやってきます。私自身も悩んでいるのですが、やはりリップクリームが一番のケアなのでしょうか。また、リップクリームにも色つき、匂いつき、光沢つきなど様々な種類があり、なかには、下手に使うよりは使わずにいる方がいいのではと思うときもあります。子ども用にはどのようなものがいいのか、また、大人が使うにしても注意点などありましたら教えてください。

A. リップクリームには,香料,着色料や保存料などが入っていて,毎日使用しているうちにかぶれの原因になることがあります。メントールが入っていて使用感の良いものもありますが,そのメントールがかぶれの原因となっていることも少なくありません。特にお子さんの場合には,ワセリンのような刺激性がすくなく,かぶれの原因になりにくいものがおすすめです。先が割れたりしている場合には,治療が必要ですので,皮膚科医を受診させてください。大人の場合にも同様の対応をおすすめします。

Q-5 冬場のかかとの荒れやひびなどの予防や対応について、中高校生(場合によっては小学生も)が簡単にできることがあればご教示ください。

かかとの皸裂(ひび)

A. 足のかかとは、体の中でも特に皮膚が厚い部分です。皮膚が厚いということはまた固いということで、柔らかい部分よりも逆にひび割れやすく切れやすい箇所でもあります。かかとのケアも他の皮膚と同様に皮膚のバリア機能の障害を起こさないように、保湿クリームの使用や予防をおすすめしますが、かかとの場合は肌の角質層を溶かす働きのある尿素系の保湿クリームがいいでしょう。しかし、皮膚がひび割れて切れてしまうと尿素はしみて痛みが伴いますので、その場合は皮膚科の医療機関を受診してください。また、大人に多いのですが、かかとの皮膚が厚くなっている場合には水虫が原因となっていることがありますので、あまり自己判断をせずに皮膚科の受診をお勧めします。