(会報「学校保健」291号 H23年11月発行号より)
島根県教育庁保健体育課 健康づくり推進室
松井 浩美
島根県では、平成21 年8月より全県体制で本システムの運用を開始しました。その年、新型インフルエンザ大流行の懸念があったことや島根県出雲市が本システムの先行実施をしていたこともあり、導入のタイミングに恵まれていたと考えます。
その後も、国立感染症研究所に学校現場の希望等をシステムに反映してもらいながら、各学校の協力により継続しています。そして、日々の危機管理の一環として、入力した学校現場にとっても「有効で活用しやすいシステム」を目指していますので、その活用の一端を紹介します。
学校での入力にかかる時間は5分程度で、入力の負担以上に以下のようなメリットがあります。
活用によるメリット(学校)
○個人の出席停止報告を入力に代えることで、「ペーパーレス」につながる。
※ 県立学校は完全実施、市町村立学校は各市町村立学校管理規則による。
○閉鎖時の臨時休業等報告書や出席停止報告書の月報の作成、印刷が即時にでき省力化につながる。
○県全体や隣県はもとより、県内各市町村別、各中学校区別、症状別の状況がリアルタイムで分かるため、早期対応につなげることができる。
○各学校で登録したパスワードを入力することにより、教職員は誰でも閲覧が可能。また、校医もパスワード入力により、担当校の各学級の状況も把握することができる。
○学級および学校全体の欠席者総数のみならず、疾患別の集計結果(週報、月報)がグラフになるので、職員会、学年会、学校保健委員会等での数値的根拠に基づいた情報提供や、保健だよりを通した保護者への指導にも活用できる。また、指定した期間を検索し、前年度の流行傾向および閉鎖措置の時期との比較や各種統計作成が可能。
活用によるメリット(行政)
○県からのコメントを掲載することができるので、入力内容のフィードバックや県内流行情報等を随時提供することにより、情報の共有化をはかることができる。
○県立学校(高校)において、学校保健安全法第9条で明記された「健康観察」が着実に実施されるようになった。
○県内全域から各校の詳細に至る情報が随時わかり、情報の早期確認とともに、県全体(市町村教委においては域内の詳細)の動向を把握し、指導や評価に生かすことができる。
○全件報告の感染症(結核、麻しん、腸管出血性大腸菌感染症、風しん)が入力されると、県教委、県保健部局、該当市町村教委、該当保健所へメール通知があり、早期対応が可能。
まとめ
島根県では、2年前から本システムの運用を開始し、現在は県全体の8?9割の学校が毎日入力をしている状態です。今後、臨時休業措置の県への報告についてもシステム入力に替えることが可能になれば、学校現場にとっては今以上の省力化とペーパーレス化が期待できます。しかし、そのためには、定時までの入力と県内全校が入力することを徹底する必要があります。
行政としては、県医師会、県保健部局(保健所)、各市町村教育委員会と協議をしながら、感染症の早期発見および蔓延予防、さらには、情報提供や情報共有の場としての機能を強化したいと考えています。
児童生徒の心身の安全を確保するために、学校危機管理のさらなる充実が求められています。本システムは、感染症発生時の危機管理のみならず、未然防止に向けた取組(事前の危機管理)や発生時対応の評価と再発防止に向けた取組(事後の危機管理)にもつながるものです。
そして、日々の入力という日常の積み重ねが、危機管理を進めていく上で、学校にとっても行政にとっても重要な意味をもっていると考えます。