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保健室利用状況に関する調査報告書

日本学校保健会より「平成18年度調査 保健室利用状況に関する調査報告書」が発行された。 文部科学省にてあった報道発表より、内容の紹介

1 はじめに

 児童生徒の心身の健康問題が多様化する中、児童生徒、教職員等の保健室利用状況から児童生徒の心身の健康状況を把握し、課題解決を図るための一助とするため、財団法人日本学校保健会では、平成2年、8年、13年に引き続き平成18年度に「保健室利用状況に関する調査」を実施し、この度報告書として発刊するに至りました。

 平成18年度の調査の特徴は、養護教諭の複数配置の有効性を検証する目的で、各校種における大規模校(養護教諭一人配置校)と大規模校(養護教諭複数配置校)との比較検討を行ったことです。(以下大規模校の養護教諭複数配置校については、大(複数配置校)と標記する。)

2 平成18年度保健室利用状況調査結果の概要

① 児童生徒の心身の健康状況

(1) 過去1年間に養護教諭が把握した疾患のある児童生徒は、各校種(小・中・高)ともに「ぜん息」、「アトピー性皮膚炎」、「食物アレルギー」などのアレルギー疾患が多かった。

(2) 心の健康に関する問題では、各校種ともに「友達との人間関係」、「家族との人間関係」、「身体症状からくる不安や悩み」が多く、共通していた。

(3) 1日平均の保健室利用者数は、小学校約41人、中学校38人、高等学校36人であった。また、養護教諭の児童生徒1回当たりの対応時間は、各校種ともに増加していた。

(4) 保健室利用者の来室時間帯は、各校種ともに午前中が多い。

(5) 来室理由別に見ると、小学校は「けがや鼻血の手当て」が多く、中学校と高等学校では「体調が悪い」が多かった。

(6) 救急処置の必要性「有」の児童生徒の割合を平成13年度調査と比較検討すると、各校種ともに増加していた。また、救急処置の対応内容では、「外科に関すること」、「受診指導」、「関係者・関係機関等への連絡」が各校種ともに増加していた。

(7) 相談の必要性があった児童生徒の割合を平成13年度調査と比較検討すると、中学校、高等学校は増加していた。主な相談内容は「身体症状」、「友人関係」、「家族・家庭の問題」が多かった。健康相談活動は学校段階が進むにつれて増加していた。

(8) 記録の必要性があった児童生徒のうち、背景要因があった児童生徒の主な理由は、各校種ともに「主に身体に関する問題」よりも「主に心に関する問題」が多かった。

(9) 児童生徒千人あたりの児童生徒数は、小学校2.0人、中学校6.6人、高等学校2.8人であった。平成13年度調査と比較すると各校種ともに増加しており、小学校と高等学校では約2倍に増加していた。

② 大規模校と大(複数配置校)との比較検討結果

(1) 1日平均の保健室利用者数は、各校種とも大(複数配置校)が多く、小学校と中学校では1.6倍の利用があり、多数の児童生徒への対応が可能となっていた。

(2) 心の健康に関する問題があった学校における1校平均の児童生徒数は、各校種ともに大(複数配置校)が多かった。

(3) 心の健康に関する問題があった学校で、養護教諭が継続支援した児童生徒の1校平均の人数は、各校種とも大(複数配置校)が多かった。中学校では2倍以上の生徒に対応できていた。

(4) 保健室登校があった学校での1校平均の人数は、各校種とも大(複数配置校)が多かった。複数配置は、不登校の予防にあたってより充実した対応が可能であると考えられる。

(5) 教職員及び保護者の保健室利用あった学校における1校平均の利用者数は、各校種ともに大(複数配置校)が多く、教職員及び保護者との連携がより充実していると考えられる。

(6) 複数配置の効果「有」の理由として、「養護教諭が常時駐在できる」、「救急処置に迅速に対応できる」、「対応に十分な時間がとれる」が各校種ともに上位に挙げられていた。その他に、「配慮を必要とする児童生徒の健康管理・支援が十分に行える」、「個別の保健指導の時間確保が容易になった」、「教職員・保護者との相談時間の確保が容易になった」、「子どものメンタルヘルスへの対応に組織的な取組ができる」などが多かった。

以上の結果から、養護教諭の複数配置校においては、児童生徒の健康管理・指導の充実はもとより、教職員や保護者等との連携などにおいても大きな効果をもたらしていることが明らかになった。

掲載日時:2011/02/21