第3回テーマ「学校での応急処置・対応」
  • 学校での頭のけがとその対応
  • 日本学校保健会専務理事 雪下國雄
 学校の管理下における災害のうち、頭部のけがの比率は、全体では7.6%であるが、小学校・幼稚園・保育所では、いずれも10%を越え、特に幼稚園では14.0%と高率に発生している。(日本スポーツ振興センター統計)
特に、頭部のけがでは他の部位のけがに比し、重症化して後遺症を残したり、稀には死亡するケースもあり適切な早期の対応が望まれる。

1.意識障害のないもの  学校での頭部のけがの大部分は、頭蓋骨の外側の損傷で、意識障害を伴わなければ、脳への影響はほとんどなく重症化するものは少ない。
「コブ」: 外部とのつながりがなく従って出血のない腫瘤(閉鎖性損傷)で、大きなものでは、ふれるとブヨブヨして液体(血液)が貯っているものもある。

「切創」: 頭皮が切れて外部に出血している傷(開放性損傷)で、傷の割りには出血の量が多く驚かされることがある。傷を清潔なガーゼ等で圧迫しながら外科医で早く処置してもらう必要がある。時には、頭蓋骨の骨折を伴う場合があり、頭蓋内との交通ができて外部からの感染を受け重症化するので特に注意が必要である。(穿通性損傷)

2.意識障害を伴うもの

 頭部を強打し脳自体に障害が及ぶと、多くの場合何等かの意識障害がおこる。その障害の程度は、脳が受けた損傷の程度にほぼ比例していると考えられている。
(1)意識障害の強さによる分類
意識障害の強さを表す分類方法には、わが国で一般に使われているJapan Coma Scale(JCS、3・3・9度方式)と国際的に使われているGlasgo Coma Scale
(GCS)がある。
3・3・9度方式(JCS:表参照)では、一見意識は正常にみえるが、詳細に検討すると多少おかしいものを一桁(I−1、I−2、I−3)の意識障害、意識障害があっても刺激を加えると覚醒するものを二桁(II−1:10、II−2:20、II−3:30)の意識障害、刺激を加えても覚醒しないものを三桁(III−1:100、III−2:200、III−3:300)の意識障害と分類している。100以上の三桁の障害を高度の意識障害と呼んでいる。
(2)意識障害の経過による分類
頭部のけがによる意識障害をその経過により分類しているものに、古典的であるが荒木の分類がある。この分類は、受傷による脳の病態を予測するものとして
役立つことが多い。(次頁図参照)
○I型(単純型または無症状型)
脳に何等かの障害はあったが症状は全くないもの。
○II型(脳振盪型)
意識障害は一過性で、通常受傷後6時間以内(多くは2時間以内)に消失するもの。一般には脳の損傷を思わせる症状はないが、頭痛、嘔吐、めまい(眩暈)等がある場合は、軽度でも一応この型に入れ観察する。
○III型(脳挫傷型)
受傷直後より意識障害が6時間以上続くもの。意識障害が軽く、又はほとんどない場合でも、受傷直後より脳の損傷を予測させる症状(片麻痺、知覚どん麻、言語障害、痙攣等)のあるものはこの型に入れる。
○IV型(頭蓋内出血型)
受傷直後の意識障害及び脳の局所症状が軽いか又は無かったものが、時間の経過と共に急激に増悪するか、新たに出現するもの。脳の局所症状としては、瞳孔の左右差、徐脈(脈がおそくなる)、四肢の片麻痺等が起り次第に増悪する。

 これは、頭蓋内血腫の形成によるもので、多くの場合頭蓋骨の中で一番薄く弱い側頭部の骨折により形成される急性硬膜外血腫によるものが大部分である。
受傷後一度症状が回復し、再び増悪する迄の期間(約1 〜 2時間)を意識清明期と呼びこの期間は受傷により出血した血液が血腫をつくり脳を除々に圧迫して症状を出現させる迄の時間を示している。
そして意識が正常にもどった状態で、その悪化するものを予測することが必要になるが、これは専門医でもかなりむずかしい。
意識障害があっても詳細がつかめず、脳の損傷が予測できない場合は、受傷による逆行性健忘(受傷時とそれに先行した部分に溯って記憶が失われること)があり、その期間の長さが、脳の損傷の程度にほぼ比例すると考えられ判断の材料となる。通常、逆行性健忘は5分程度であるが、稀には数時間から24時間以上続くことがあり、これら長時間に及ぶものは要注意である。

3.頭部のケガの対応

(1) 意識障害の全くなかったもの。意識障害があっても短時間(数分程度)で、逆行性健忘も数分(5分以内)程度のもの。

1 〜 2時間安静・経過観察の後、帰宅させるが、その際は家族には次のような注意を指示し、異常があれば早期に医師の診察を受けることをすすめる。
ア)意識障害の出現
うとうとしたり、すぐ寝てしまう。
声をかけて起しても、すぐ又寝てしまう。
わけの判らないことをいう。
イ)頭痛・嘔吐の出現
ウ)顔や四肢の片側に麻痺出現
口笛を吹かせると、口が曲り音が出せない。
舌を出させると麻痺のある側に曲る。
四肢も麻痺側の筋力も弱まり痛みもにぶくなる。
エ)物が二つに見える。
上下方や左右のものを見させると二重に見える。
オ)けいれんがおこる。
カ)瞳孔の大きさに左右差がおこる。
患側の瞳孔が散大する。

(2)意識障害か逆行性健忘のどちらか、又は共にかなり長時間(少くとも5分以上)続いたもの。

少くとも6時間以上、厳重な観察により傾眠(うとうとする)、頭痛、嘔吐、複視(ものが二重に見える)、手足の軽い麻痺等を早期に察知するよう努める。少しでも異常を発見したら医師の診察を受けることが大切。できれば、医師の管理下での経過観察が望ましい。

(3)最初より意識障害があり、しかも高度(100以上)で継続するもの(?型)や、意識清明期にも、瞳孔の左右不同や、四肢の麻痺が出現したり、徐脈(脈がおそく博動が大きくなる)や呼吸障害(抑制されて不規則になる)、嘔吐(嘔気をあまり伴わずに大量に吐く)が強くなってくるもの。

早急に救急車を呼び、脳外科手術の対応ができる医療機関に搬送する。救急車が到着する迄には、早くとも5 〜 10分を要するので、その間、急激な脳圧の亢進による呼吸停止や心停止にそなえ、心肺蘇生法の準備、AEDの手配を早急に行う必要がある。

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