2019年7月24日

手足口病流行への注意喚起(日本臨床皮膚科医会)

手足口病の流行に対する注意喚起

-学校・幼稚園・保育所への指導・助言-

日本臨床皮膚科医会学校保健委員会

 手足口病は学校保健安全法では第三種その他に,感染症法では5類感染症に分類され,全国約3,000カ所の小児科医療機関より毎週報告がなされる定点把握疾患に定められています.例年,4歳くらいまでの子どもを中心に春から増え始めて夏にピークを迎え,その後,減少します.報告数は年によって大きく異なりますが,最近では2011年,2013年,2015年,2017年と2年毎に多い年を繰り返しています.今年は5月初旬から増加が続いており,7月第1週には過去10年間の同期比で定点あたりの報告数が最多となり,多くの地域で警報基準値(定点あたり5.0人)を大きく上まわっています1).

 病気の原因となるウイルスは主にコクサッキーウイルスA16(CA16),A6(CA6), A10(CA10)にエンテロウイルス71(EV71)があり,感染してから3~5日後に口の中,手のひら,足底や足背などに2~3mmの小水疱が出現します.発熱は約3分の1にみられますが,高熱になることは通常ありません.ほとんどの発病者は3~7日で軽快する感染症という認識ですが,EV71に感染した場合には他のウイルスによる手足口病と比べて,中枢神経系の合併症を引き起こす割合が高いことが明らかとなっており,本邦でも脳炎による死亡例の報告があります.

 国立感染症研究所のウイルス検出情報によると,今年も2017年同様,CA6が半数以上を占めています2).CA6による手足口病は,臀部や四肢などにも発疹が生じることが多く,水疱が大きく水痘と見間違うような中心臍窩を認める場合もあり,発症数週間後に爪脱落が起こる症例(爪甲脱落症)が見られるなど,従来の手足口病とは臨床所見が大きく異なるのが特徴です.当医会ホームページのひふの病気にも手足口病の解説3)を掲載してありますので,こちらもご参照ください.

 なお,手足口病に関する学校・幼稚園・保育所への登校(園)の目安(文部科学省・厚生労働省),当医会を含めた関連4学会による出席停止についての統一見解につきましても同ホームページ4)をご参照ください.重要なこととしては,症状が消失した後も2~4週間にわたり便中にウイルスが排出されるため,流行阻止目的での出席停止はあまり効果がなく,トイレ後や排泄物の処理後の手洗いを徹底することが大切な点をご指導ください.

令和元(2019)年7月

参考文献

1)国立感染症研究所 IDWA感染症週報速報データ(2019年第27週)
  https://www.niid.go.jp/niid/ja/data.html

2)国立感染症研究所 IASR病原微生物検出情報
  https://www.niid.go.jp/niid/ja/iasr/510-surveillance/iasr/graphs/1532-iasrgv.html

3)ひふの病気 手足口病 http://www.jocd.org/disease/disease_31.html

4)日本臨床皮膚科医会ホームページ http://www.jocd.org/

掲載日時:2019/07/24