第3回テーマ「学校での応急処置・対応」

 心肺蘇生法ガイドライン2010改訂のポイントと一次救命処置の手順

 ガイドライン2005 から2010 への改訂で最も重要なポイントは、以下の通りです。

(1)訓練を受けていない救助者は119 番通報をして通信司令員の支持を仰ぐ。一方、通信司令員は訓練を受けていない救助者に対して電話で胸骨圧迫のみのCPR を指導する。

(2)救助者は、反応が見られず、呼吸をしていない、あるいは死戦期呼吸のある傷病者に対しては直ちにCPR を開始する。死戦期呼吸を認める場合でもCPR の開始を遅らせるべきではない。

(死戦期呼吸:心停止を示唆する異常な呼吸で、ときおりしゃくりあげるように認められる不規則な呼吸)

(3)心停止と判断した場合、救助者は、気道確保や人工呼吸より先に胸骨圧迫からCPR を開始する。

(4)すべての救助者は、訓練の有無にかかわらず、心停止の傷病者に対して胸骨圧迫を実施する。

(5)質の高い胸骨圧迫を行うことの重要性がさらに強調された。救助者は少なくとも5?の深さで、1分間当たり少なくとも100 回のテンポで胸骨圧迫を行い、胸骨圧迫解除時には完全に胸郭を元に戻す。胸骨圧迫の中断を最小にする。

(6)訓練を受けた救助者は、胸骨圧迫と人工呼吸を30:2の比で行う。

 

 一次救命処置の手順

1.反応の確認と救急通報

周囲の安全を確認する。

肩を軽くたたきながら大声で呼びかける。

反応がなければ、その場で大声で叫んで周囲の注意を喚起する。

周囲の人に救急通報(119 番通報)とAED の手配を依頼する。 

 

2.心停止の判断

傷病者に反応がなく、呼吸がないか死戦期呼吸が認められる場合は心停止とみなす。

熟練していない救助者は心停止確認のために脈拍の触知を行うべきではない。

脈拍の有無に自信のないときは、呼吸の確認に専念し呼吸がないと判断した場合には速やかにCPR を開始する。

 

3.CPR の開始と胸骨圧迫

CPR の開始手順としては、胸骨圧迫から開始する。

傷病者を仰臥位に寝かせ、救助者は傷病者の胸の横にひざまずく。可能なら堅いものの上でCPR を行う。

胸骨圧迫部位は、胸骨の下半分。胸の真ん中を目安とする。乳頭間線を指標とする方法は信頼性に欠ける。

成人においては少なくとも5?以上、小児・幼児では胸郭前後径の1/3を押す。

1分間あたり少なくとも100 回のテンポで行う。

毎回の胸骨圧迫の後で完全に胸壁が元の位置に戻るように圧迫を解除する。ただし、胸骨圧迫が浅くならないように注意する。

複数の救助者がいる場合は、救助者が互いに監視し、胸骨圧迫の位置やテンポ、深さが適当か確認する。

不慣れな救助者は、脈拍を確認するために胸骨圧迫を中断するべきでない。明らかに自己心拍再開と判断できる反応が出現しない限り中断してはならない。

救助者が複数いる場合は、1〜2分ごとを目安に胸骨圧迫の役割を交代する。

人工呼吸ができる場合は、胸骨圧迫と人工呼吸を30:2の比で行う。人工呼吸を実施する場合は気道確保が必要である。

気道確保法としては、頭部後屈あご先拳上法を用いる。訓練を受けた者は下顎挙上法でもよい。

すべての年齢において、1回の換気量の目安は、人工呼吸によって傷病者の胸の上がりを確認できる程度とする。成人の場合は約1秒、小児・幼児は年齢相応より加減する。

熟練救助者が二人以上で小児・幼児に対してCPR を行う場合は胸骨圧迫と人工呼吸比を15:2にする。

やむなく胸骨圧迫を中断するのは、人工呼吸を行うとき、脈拍を評価するとき、電気ショックを実施するときである。この場合でも胸骨圧迫の中断は最小にする。

CPR は、傷病者に十分な循環が回復する、あるいは救急隊に引き継ぐまで続ける。

訓練を受けていない救助者は胸骨圧迫のみのCPRを行う。訓練を受けた救助者であっても、気道確保し人工呼吸をする意志または技術を持たない場合は、胸骨圧迫のみのCPR を実施する。

 

4.AED

CPR を開始し、AED が到着したら、速やかに装着する。

前胸部と側胸部にパドルやパッドを装着する。容認できる他の位置としては、前胸部と背面、心尖部と背面である。未就学の小児に対しては小児用のパッドを用いる。小児用がない場合は成人用パッドで代用する。

AED によるリズム解析が開始されたら傷病者に触れない。AED の音声メッセージに従ってショックボタンを押し、電気ショックを行う。電気ショック後は脈の確認やリズム解析を行うことなく、すぐに胸骨圧迫を再開する。