第3回テーマ「学校での応急処置・対応」
  • 保健指導・対応とけがの対処事例
  • 千葉市立高州第二中学校養護教諭 渡部 澄絵
保健室の対応  日常の学校生活で、歯・口のけがの発生する原因は転倒、人や物への衝突がトップで、特に中学生の時期は、急激な成長と部活動など運動レベルのアップに技能が伴わずけがの発生も高率です。更には精神的にも未熟で、様々な場面で感情的に無分別な行動に走ったりすることもあり、常に突発的な事故は予測が立ちにくく、こと、歯と口のけがとの関連は高いように思われる。(図参照
けがが発生した時、「どのような状況でけがをしたか」を正確に把握しなければ判断を誤ることがあります。けがを確認する時は、頭部や歯・口の周りだけでなく全身の点検が必要です。同時に、脱落した歯をよく探さなければならないので、周囲の人への協力を呼びかけます。
特に口腔のけがは、状況によってはかかりつけ医ではなく口腔専門の医療機関へ直送となることも考えられるので、学校歯科医の他にいくつかの専門機関の情報を誰でもすぐ理解できるように(電話番号、住所、診療時間など)表示しておくことも必要です。
中学校の原因別の傷害発生割合
生徒への指導  生徒への事前指導としては学級指導での『けがの予防』指導時に、また6月の『う歯予防指導』時での歯と口の構造で、けがの予防にもふれます。さらに部活動でも各種目で起こりやすい事故と予防について指導することも必要です。
事故が発生した時は事後指導として、一般生徒にも日常生活の注意を喚起させるために、状況だけではなく、対処法などの指導をします。もちろん第一番として、全職員に理解してもらうところから始めます。
けがの対処事例  歯・口のけがは、突発的に、そしてどちらかというと「どうして?」というような、不注意によるものが多いように感じています。
最近の自分自身の体験では、生徒間のトラブルで殴られて犬歯が頬を貫通した事例があります。事故後、保健室に来た時には出血も止まっていて、一見、口腔内からの出血のようにも見えましたが、点検して出血部を拭き取っていると、頬の外側に傷口を発見しました。歯自体はどこも異常が見られませんでしたが、そっとうがいをさせてかかりつけ医へ移送し、受診先で保護者と合流しました。一方、殴った方の生徒の保護者にも学校に来てもらって事故の経緯を説明し、受診結果を受けて、双方の保護者で話し合いを持ってもらいました。
また近隣の中学校で発生した事故では、1年男子が移動教室の時に友人とふざけていて、身体をグルグル回されて眼が回り、両手に持った教科書をしっかり抱えたまま顔から床に倒れ、前歯を亜脱臼する事故がありました。
他にも、(1)テニス部でラリーをしていてボールを拾いに行った時、他の生徒のラケットが前歯に当たり、5分の1ほど欠けた事例、(2)掃除の時間、雑巾がけをしていて、友人がふざけて手を出したのでびっくりして急ブレーキをかけたが顔から床に突っ込んで前歯が欠けた事例、(3)体育の授業で走っていて、前の生徒が転んだのを避けようとしたが間に合わずに転倒し、前歯を折った等など。この3件は、折れた歯を持って行きましたが残念ながら元に戻りませんでした。 事故が発生すると、誰もが「事前に一言、注意しておけば」「事前に点検しておけば」その事故は防げたのではないか、と悔やみます。『ヒヤリハットの法則』を忘れずに対応したいと考えています。

「学校管理下における歯・口のけが防止必携」(日本スポーツ振興センター発行)の活用について  正直なところ、この本の作成に参加させていただくまで、自分自身、「歯と口のけが」に対する意識が低かったと反省しています。
頻繁に発生しないのでどうしても関心が低くなりがちですが、これらのけがはいざ発生すると、関係者や災害給付も含めて2次的なトラブルへと複雑化しやすい問題です。
この本は、すべての教職員に読まれるよう作成されました。 まずは自分の校種の特徴と災害の事例を確認してください。そして、具体例と応急手当も含めた知識を周知徹底するように取り組んでいただければと思います。