第1回「健康診断」

健康診断での悩み

K それではお話を進めていきましょう。健康診断での実施で、これまでに困ったこと、また、今悩んでいることはありますか。

A 私の学校では児童数が868名と多いため健診が1回では終わらず、また複数の校医さんがいらっしゃるので、校医さんとの日程調整が一番大変です。あとは、やはり児童数が多いため、尿検査などの提出物がなかなか集まらないということが悩みです。

B 私の学校では前任の養護教諭がマニュアルを作成してくれましたので、特に困ったことはありません。ただ、健診で使う器具の消毒なのですが、本校では自校で行っています。県内のほかの市にある学校では業者に委託しているところもあるそうなのですが、今回は、皆さんのところではどうされているのかということをお聞きしたいと思っています。

K マニュアルというのはどういうものですか。

B 養護教諭がどのように健康診断を進めていくかについて具体的に記された「健康診断の手引き」といったものです。例えば必要物品は何か、器具の並べ方、児童の並ばせ方、実施する部屋のレイアウトなど、写真や絵で丁寧に説明されています。養護教諭向けだけではなく職員向けのマニュアルもあります。その年によって児童数の変動もありますのでマニュアルの内容を変更する年もあります。

A 私のところでも、マニュアルがありますので、自分で改良を加えつつ、健康診断だけではなく、日本スポーツ振興センターの手続きのことや保健室経営計画も入れた、保健関係のすべてがわかるような資料を1冊作っています。4月のあわただしい時にはなかなかほかの先生方とのコミュニケーションも取りづらいので、こうした資料を活用します。また先生方が忙しい時にはその資料から必要事項だけを抽出したお知らせも出すことがあります。

K その資料は前任の先生から引き継いで続いているものなんですか。

A そうです。あとは独自で、校医さんとの連絡の取り方や性格や特徴などをまとめたファイルもあります。でも初任の時を思い出すと、やはり大変だったという思いはあります。今は養護教諭が複数なのですが850人以上の児童数で、最初は私一人だったことがあったんです。その年は例年秋に行われる運動会が春に行われた年で、学校全体が春にとても忙しかったんです。ほかの行事も多いし、運動会の練習の合間に健診を行ったような感じで、初任研修もありましたし、大変でした。マニュアルを見ても何がなんだかわからない状態で、前任の先生に連絡を取りながら何とかこなしました。健康診断がない日でも子どもたちは保健室にわんさか来るし……5月が終わるまでは保健室以外決まった教室しか出入りしていなかったくらいです。マニュアルはありがたかったのですが、実際には落ち着いて活用できませんでした。

C 私はやはり日程調整が難しいと感じています。特に耳鼻科と眼科の校医の先生は学校のあるN市全体でも少なくて、一人の医師の方が複数校の校医を兼務している状態なので、学校間の調整も必要になってくると思います。また器具の話が出ましたが、本校でも健診で使う器具は自校で消毒しています。旧町が市に合併する前までは町の保健センターがしてくださっていたそうなのですが、市に合併するに当たって保健センターでの消毒はできなくなってしまうということで、急遽消毒の機械を用意し、それを本校に置くことになったそうです。いまは旧町の小・中学校、幼稚園の分の耳鼻科と歯科の器具の消毒を本校で行っています。ですから消毒の都合上においても、日程調整は大切な仕事になっていると感じています。

K 私は養護教諭歴22年ですが、校医さんの取り合いということはやはりありましたね。ただ本校の場合は学校があるのは首都圏内なので、医師の数が少ないということではなくて、ある校医さんがほとんど趣味のような感じで学校医を複数引き受けていたことが原因です。しかも「健康診断の日程を早く決める学校はいい学校」などと発言されるものですから、もう1月くらいから日程調整をするような状態で大変でした。全国的に眼科、耳鼻科は少ないかと思いますが、やはり皆さんのところの校医さんも兼務されていますか。

B 本校でもやはり兼務されている方が多く、特に耳鼻科、眼科は少ないので、12月に就学時健診が終わったらすぐに手配するような状態です。

K 都合のいい時期というのはどの学校も同じ時期なんで重なっちゃうんですよね。