歯と口からの健康支援

1.子どもの歯並びについて

(一社)日本学校歯科医会

理事 佐々木貴浩 先生

Ⅰ 近年の歯並び・かみ合わせの状況

子どもの歯並び・かみ合わせの状況を調べた歯科疾患実態調査1)では、12~15歳で叢生(乱ぐい歯)のある者は34.5%(平成17年調べ)から43.8%(平成23年調べ)になっており、歯並びに異常のある子どもは近年増えていると考えられます。歯並び・かみ合わせの異常は大きく分類して図1ようです。歯並びの異常として、叢生(乱杭歯・八重歯)スペースドアーチ(すきっ歯)正中離開(上の左右中切歯間に隙間のある歯並び)、かみ合わせの異常として、上顎前突、下顎前突、交叉咬合、開咬、過蓋咬合、鋏状咬合があります。


(図1)歯並び・かみ合わせの異常の模式図

これらの異常は乳歯列期にも認められますが、永久歯列期ではより顕著となり異常を有する者の率も高くなります。小学1年生から学齢別変化を追跡した調査研究2)では、概要は図2に示すようであり、図2グラフ中の正中離開のようにある一定の年齢を過ぎると自然に改善してくるものもありますが、歯科矯正治療のきっかけの大半を占めている上顎前突や叢生は、有する者の割合が学齢とともに増加していきます。


(図2)小学生1年生~6年生における歯列不正・咬合異常別の発現頻度の経年推移

Ⅱ 歯並び・かみ合わせの学校での検査はどうなっているの?

学校での検査は歯科医院で行う検査と異なりスクリーニング検査であり、それによって「健全:0」「要観察:1」「要医療:2」にふるい分けがなされます。永久歯が萌出完了した者についての判定は比較的容易ですが、小学校低学年から中学校にかけては、顎の骨の成長発育が盛んで、なおかつ乳歯から永久歯への交換があることから変化の著しい時期であり、短時間に判定1、あるいは2の判断をすることは容易なことではないと考えられています。したがって、この時期にさらに評価の精度を上げ適切な行動のためには、学校歯科医の個別健康相談やかかりつけ歯科医院受診を推奨いたします。毎年の健康診断結果のお知らせは、児童・生徒や保護者にとって歯並び・かみ合わせのことを、観察・相談する機会として大切です。そして歯科矯正治療を検討するなどの参考資料として歯・口の健康づくりにお役立ていただけますと良いと考えます。

※判定 1:定期的観察が必要 2:専門医(歯科医師)による診断が必要(その対応として個別指導・健康相談を重視する)3)4)

(図3)咬合判定「2」の基準:学校歯科医の活動指針<改訂版>付録健康診断の流れと要点より抜粋

Ⅲ 歯並び・かみ合わせの治療について

自然に良くならない歯並び・かみ合わせの異常の改善には、歯科医院で歯科矯正治療や必要な外科手術を受けたり悪影響を与えている習癖等について指導を受けたりすることになります。近年、子どもに歯科矯正治療を受けさせたいと思う保護者や身近に矯正歯科を標榜する歯科医院が増加したことなどから、治療の経験者や治療を受けている子どもは増加してきています。その一方で、歯科矯正治療は一部の先天性疾患に合併するものを除いて健康保険の適用ではなく、比較的高額な実費(歯科医院ごとに料金が異なる)が必要になることから、異常があっても治療に踏み出すことができない家庭が割と多いことも否めません。これは、費用の問題も然ることながら、学校でのスクリーニング結果について、保護者・学校関係者間などで共通理解がうまく醸成されてこなかったことも一因と考えられます。これからの子ども達のためには、学校歯科医を含めた学校関係者と保護者間で歯並び・かみ合わせの問題について、生涯に渡る健康の保持・増進の立場から個別健康相談を十分に行い、適切な対応ができるように連携を強くしなければならないと考えます。

参考資料

  • 1)平成17年および平成23年歯科疾患実態調査(厚生労働省)
  • 2)小学生における歯列・咬合状態の追跡研究
    (佐々木 他、口衛誌58,158-167,2008)
  • 3)「生きる力」をはぐくむ学校での歯・口の健康づくり(文部科学省,2011)
  • 4)学校歯科医の活動指針〈平成27年 改訂版〉(日本学校歯科医会,2015)

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