精神保健・精神疾患を学ぶ ―改めて知っておきたい基本知識―
 

7.わが国おける精神疾患教育の開発

これらの動きに啓発され、わが国でも我々を含め少数のグループが精神疾患の基礎知識に関する授業プログラムを開発し始めている。このうち我々のグループが開発した授業の概要を図5に示す。


この授業の特徴は、

  • 1)日本の学校のスケジュールの忙しさに合わせて、短時間(小学校では45分1回、中高は原則として50分を2回)で実施できるようにしたこと
  • 2)学校の教員が実施できるようにしたこと
  • 3)専用に開発した視聴覚教材を活用すること
  • 4)精神疾患と生活習慣との関係に注目すること

で、早期対処とともに一次予防(発症予防)も目指していることが大きな特徴である。このうち2)の利点は、学校教員が実施できれば多くの学校で広げることが可能であること、および学校教員が実施することで、学校教員自身の知識を向上できることにある。なお3)の視聴覚教材の活用方法と合わせて、教員向けの指導案と授業実施解説書も作成しているので、これまで精神疾患に関する知識が不十分であった教員でも、大きな困難なくこの授業は実施可能である。既に小中高合わせて50校近くで本授業は実施されている。

なお我々の授業では、実施に際して教員の皆さんに1つの約束をしていただいている。それは「効果検証」である。具体的には授業前後と3か月後にアンケートを児童生徒に記入してもらい、知識と対処への考え方の理解と定着を調べることである。また対照群の設定もできるだけお願いしている。我々はこの授業を、子どもたちに必要でかつ良い効果をもたらすものと信じて開発している。しかし、本当に効果があるのか、問題点はないのかを明らかにするには、我々の「信念」だけでは全く不十分であり、論理的・統計学的方法に則った効果検証が不可欠である。このような効果検証は医学・保健学の分野では常識となっているが、今後は保健教育の分野でも広げていく必要がある。この点をご理解いただいた上でご興味のある方は、ご連絡いただければ幸いである(実施方法ならびに効果検証方法に関するより詳しいご案内を致します)。


参考文献

  • Kessler ほか (2005) Lifetime prevalence and age-of-onset distribution of DSM-4 disorders in the National Comorbidity Survey Replication. Archives of General Psychiatry 62: 593-602.
  • Kessler ほか(2007) Lifetime prevalence and age-of-onset distributions of mental disorders in the World Health Organization’s World Mental Health Survey Initiative. World Psychiatry 6: 168-176.
  • Ojio Y, Sasaki Tほか (2015) Effects of school-based mental health literacy education for secondary school students to be delivered by school teachers: a preliminary study. Psychiatry Clin Neurosci. ;69(9):572-9.
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