気になる成長期の子どものスポーツに関わる障害やけが
  1. 学校生活で注意する後遺症の残るけが


群馬大学医学部整形外科学教室
教授 高岸 憲二 先生
  1. 頚椎脱臼骨折と頚髄損傷
  2. 肩・肘のけが
  3. 手指のけが
  4. 股関節、膝のけが
  5. 足首の捻挫
 

■はじめに

ここでは学校生活でおこるけがとしてオーバーユース(使いすぎ)ではなく、一度の大きな力が加わっておこるけがを取り上げます。学校生活では、けががおこらないように安全には十分注意されていると思いますが、休憩時間や体育時間、運動会・体育祭、体育的部活動など様々な状況において、「けが」をすることがあります。その程度は軽症から重症まであり、中には重い後遺症が残るものまであります。ここでは部位ごとに代表的な後遺症の残るけがを取り上げて説明していきます。

■頚椎脱臼骨折と頚髄損傷

頚椎脱臼骨折と頚髄損傷は最も重篤なスポーツ外傷の一つであり、頚髄損傷がひとたび起こると重大な後遺症を残して大きなハンディキャップを生じ、本人や家族に・肉体的苦痛を生じます。学校で行う競技としては柔道、水泳の飛び込みやラグビーによって発生することが知られています。組み体操ピラミッドの崩落での事故が社会問題となっています。頚髄損傷が疑われたら、体から頭にかけてなるべく動かさないようにして至急救急病院へ搬送します。専門の頚髄損傷に対する特有の治療はないために医学的に正しいプレーを行うことや危険防止の競技団体の対策などの予防が重要です。

■肩・肘のけが

肩関節は反復性脱臼が最も多くみられる関節です。ほとんどのものが外傷性の脱臼に続発しておこります。外傷による肩関節の脱臼は、学校生活でもラグビー、アメフト、柔道などのコンタクトスポーツに多く、肩関節は一度脱臼を起こすと、その後は脱臼しやすくなり、前下方脱臼では、肩関節を外転・外旋位(ボールを投げるような肢位)を強制されることによっておこります。整復してもらうために脱臼した手を動かさないようにしながら整形外科を受診させます。若年者は一度脱臼を起こすと軽微な外力でおこるようになり、スポーツ活動ばかりでなく、寝返りのような日常動作でも脱臼が起こりやすくなります。これを反復性肩関節脱臼と呼びます。将来、変形性肩関節症が起こります。根本的な治療としては手術しかありません。上腕骨近位端骨端線損傷では骨端線での長軸方向への成長がおかされ、左右の上肢長差をきたすこともあります。

 

肘関節におこるけがとしては、小学生では上腕骨顆上骨折、上腕骨外顆骨折、上腕骨遠位骨端線離開、上腕骨内顆骨折、橈骨頭頸部骨折などがあります。関節面が正しく整復されないと不適合性のために変形性肘関節症をおこします。顆上骨折は内反肘をおこしてきます。フォルクマン拘縮は上腕骨顆上骨折に合併してくることがあり、手の感覚がなくなったり、手の色が白くなって早急に処置をしないと壊死におちいった筋は線維組織に置き換わって指が曲がったままで伸びなくなってしまいます。受傷時には肘関節を動かさないように固定して至急整形外科医へ受診させてください。外顆骨折を見逃したり、癒合不全を起こすと偽関節となり、外反肘を起こして将来尺骨神経麻痺や変形性関節症をおこしてきます。

■手指のけが

手関節では橈骨遠位端骨折および尺骨遠位端骨折(骨端線損傷Salter-HarrisIII,IV,V)が後遺症を起こしやすく、V型は骨端線が圧潰されて上肢長差(下肢では下肢長差)を生じます。骨端線損傷では上下肢のいずれの関節でもSalter-Harrisの内、III,IV,V型は後遺症を残しやすいので注意を要します。手関節を固定して整形外科へ受診させてください。

手指で多いけがは、突き指とも言われる骨性槌指であり、遠位指節間関節での指伸展機構の損傷で、伸筋腱損傷のみの場合と末節骨背側の骨折や末節骨の掌側脱臼を伴う場合があります。遠位指節間関節の自動伸展が不可能になります。放置すると近位指節間関節が過剰に伸展する変形を生じ、白鳥のくび変形に移行します。整形外科へ受診させてください。

■股関節・膝のけが

股関節では、小児の大腿骨頸部骨折は成人に比べて発生頻度が少ないですが、おこると他の小児骨折と異なり、骨癒合力や自家矯正力に乏しい特徴があります。骨端離開を含めて、発生すると大腿骨頭壊死症、偽関節、骨端線早期閉鎖など重篤な後遺症が残る可能性があります。大腿骨頭すべり症(急性型)は関節の変形をきたして股関節の痛みや歩行が困難になります。股関節を動かさないようにして整形外科へ受診させましょう。

膝の前十時靭帯損傷クラブ活動ではサッカー、バスケットボール、バレーボール、ラグビーなどでおこります。学校生活で生じる前十字靭帯断裂の治療は、クラブ活動に大きく影響を受けます。できるだけ早期に適切な再建術を受けることが望ましいのですが、クラブ活動を優先して手術が遅れると半月板損傷や軟骨損傷を来すため、後々より激しい後遺症の原因となるので注意が必要です。また、骨端線閉鎖前の手術療法は骨孔作成によって骨端線を損傷することから、後の成長障害が報告されていますが、近年では骨孔が骨端線を貫通しない再建術も考案されています。

半月板損傷は放置すると軟骨損傷や膝関節の動きが悪くなるため受傷した場合には早期の治療が必要です。日本では欧米と比較して外側円盤状半月板を持っている頻度が多いために、特に激しくスポーツを行わない人でも半月板損傷をおこすことがあります。外側半月板損傷は、関節面が脛骨面凸の形状をしているので、脛骨面凹をしている内側半月板損傷と比較して早期に軟骨損傷を来すことが多くあります。

■足首の捻挫

足関節の捻挫はバスケットボールやバレーボールで、ジャンプの着地で誤って人の足の上に載ったり、グラウンドのくぼみでなどで足を取られて足首を捻ってしまうことがあります。足首の捻挫は、スポーツで起こる最も多いけがのひとつです。捻挫は、関節を支持している靭帯がいたむことです。前距腓靭帯、踵腓靭帯がいたむ程度によって重症度が異なります。重度損傷は軟骨損傷を伴っていることも多く、放置すると慢性化するだけでなく将来関節変形をきたして変形性足関節症になる恐れもあります。

 

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学校生活において後遺症を残す各部位で代表的なけがについて簡単に述べました。これらのけがが起こったら早急に整形外科に受診することをお勧めします。

 

表 けがをしたときの応急処置“RICE”
1. Rest(安静): 受傷部位を動かさないようにし、安静を保つ。
2. Ice(冷却): 受傷部位を氷水や氷のうで冷やす。冷やすことによって腫れを防ぎます。腫れが治るまで、凍傷に注意しながら断続的に1〜2日間は続ける。ただし、翌日になっても腫れが治まる傾向になく、痛みも強いときには医師の診断を受けたほうがよい。
3. Compression(圧迫): 受傷部位を伸縮性包帯で巻き適度に圧迫。腫れや内出血を防ぐが 、強く巻きすぎて循環障害を起さないように、皮膚の色の変化を時々チェックする必要がある。
4. Elevation(挙上): 受傷部位を心臓より高く挙上し腫れを防ぐ。腕や手であれば、手を上げた形で、脚や足であれば、仰向けに寝て足の下に台を入れて挙上する。
 
Rice処置

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