第21回「冬の保健指導」

■生活習慣に関する指導

 今、生活習慣というお話がありましたけれども、きちんとした生活習慣は感染症予防の基盤にもなるところだと思います。本校でも、長期休業明けに生活チェックなどを行うと、高学年だけでなく低学年のうちから、寝た時刻が11時以降の児童が少なくありません。家庭の中で大人のペースでの生活になってしまっている場合もあります。先生方も発達段階に関わらず、生活習慣に関しての指導は苦労されているところだと思います。そこで、ぜひ生活習慣に関する指導についてもお聞かせいただけますか。

熊木 昨年、私の後輩の養護教諭が日本体育大学大学院に入学し、睡眠の研究をしております。研究のためのデータを取りたいので調査に協力してもらえないかという依頼があり、睡眠計を使った睡眠の調査を昨年度2回実施してみました。睡眠計を枕元に置いて、寝る時にスイッチを1回押し、起きたら2回押す。そうすると睡眠計が寝返りをうつ動作などを感知して、深い眠りがどれぐらいの時間あったのか等が測れるそうです。生徒たちの睡眠状態が意外と悪いということがわかりました。その集計結果を基に日体大の教授をお招きし、生徒向けに睡眠が大事だというお話をしていただく機会をもちました。話の内容が非常に面白かったので、生徒たちは1時間集中してよく聞いていたと思います。その講話のあと、ひと月ほどはなかなかいい睡眠が取れていたようなのですが、長期の休みを挟んで、抜き打ちで声をかけてみた時には、もう忘れていたという状況でした。やはり繰り返し伝えていかないと継続には結びつかないのだなというのを実感しました。

 睡眠に関しては成長ホルモンの話などもなかなか実感として子どもたちの行動に結びつけていくのが難しいので、目に見えて表われる睡眠計の取組は実感しやすいですね。

熊木 データが出たら生徒たちに還元できるものだと思うので、睡眠に関する保健指導に取り組んでいきたいと思っています。

 吉井先生、先ほど個別指導のお話をいただいたんですけれども、子どもたちの生活習慣に関してはいかがですか。

吉井 一人一人の課題は様々です。睡眠でいえば昼夜逆転してしまう子どもは多いです。摂食・嚥下障害があり、食事で十分な栄養や水分を摂るという基本的なところが難しい子どももいます。しっかり睡眠、栄養を摂れないと感染症のダメージも大きいです。

 冬も水分補給は重要ですね。

吉井 尿の量なども確認しながら適切に水分を摂らせる指導をしています。ほかには口腔ケアも大事なので一人一人に合わせた歯磨きの仕方などを担任と一緒に模索しています。経管栄養の子どもも含めてむし歯・歯肉炎ということもありますが、常在菌をコントロールして誤嚥性肺炎の予防、呼吸器感染症を防ぐ意味でも口の中を綺麗にというのが基本になります。

 個別に対応されているのですね。

吉井 毎朝、全クラスを回ります。一人一人の健康観察をして、給食の時間にもまた回ります。部主事もそれぞれの学部を回るので、担任だけではなく、複数の目で時間を追って健康観察をしています。派遣看護師もいますので一人の子どもに多くのメンバーが関わっています。

 日常的にその都度、ということですね。

吉井 朝、登校してきた状態と帰りとでは急激に変わってしまうこともあるので常に確認をしています。

 生活習慣に関して高校生の様子はいかがですか。

池田 生活の乱れにつながっていくことが先ほど中学でもありましたが、高校生はアルバイトをしている生徒もいますし、携帯電話やスマートフォンを持っている生徒が100%近くいます。学校を離れた生活の中で携帯電話やスマートフォンでのSNSやLINEなどからくるトラブルも多く、スマートフォンを使って夜遅くまで起きていて、朝それを引きずってくるというようなこともあり、なかなか難しい現実があります。

 高校生になると保護者の管理というより自己管理や自己判断が大切になってきますね。小学校高学年でも、保護者の方の目が届かなくなってきていて、生活習慣に影響している児童が増えてきています。

岡本 ちなみにですが、本校の先ほどのアンケートの結果、携帯など自分専用のものを持っている生徒は全学年とも約75%で、1日のうちに何時間も使っているという現状もわかりました。

 メディア依存になっている子どもも増えていると思います。やはり生活習慣とは切り離させなくなっていますよね。そのあたりは直接、感染症へつながるいうことではないですが、明らかに健康面に影響しています。メディアとの接触という部分は今、重要視されてきていますね。