第21回「冬の保健指導」

■インフルエンザの対応

 本日のテーマは「冬の保健指導」ということで、冬休み前から1・2月に向けて参考になる内容になっていけばと思っております。
インフルエンザがもう流行り出しているというようなお話しも出ていますが、現在の状況はいかがでしょうか。

岡本 今週初めの欠席について生徒から話を聞き取ってみると部活動中の感染があったと思います。本校は野球、バスケット、ラグビー、柔道など、運動部の活動が盛んです。練習も試合も皆参加したいために、り患したまま活動を続けることで、広まってしまったのではないかと思われます。その他に休日にテーマパークや繁華街に出かけたという場合もありました。またインフルエンザですが、熱が急に上がらない生徒もいるようで見過ごしてしまったこともあったのかなと思っているところです。

 その後はやはりお便りなどでお知らせされているところでしょうか。

岡本 学校医に助言をいただき、1クラスだけ早々に下校措置と三日間の学級休業の措置をとりました。その際に十分な休養、栄養・水分補給など家での過ごし方について保護者への通知を添えて帰しました。同時にその他の生徒には、臨時保健だよりを配布し、手洗い・うがい・水分補給などを呼びかけました。

 小学校では特に工夫されているところなどありますでしょうか。

石村 本校では今年度、ゴールデンウィーク近くまでインフルエンザの児童がおり、今まではなかったことですが、4月下旬に学級閉鎖を行いました。新学期がはじまったばかりだというのに、学校健診などの行事を変更するということがありました。先ほど、大阪でインフルエンザが流行っていると聞いてすぐ関東の方にもやってくるのではと心配になりました。本当に1年を通じて気を抜けないところはあります。工夫というより常に情報収集に努め、広げないことが大切ではないかと感じます。

 高校ではいかがですか。生徒にどのような形でお知らせをしていらっしゃいますか。

池田 今の時期ですと手洗いなどの他に厚生労働省で推奨している予防接種の紹介などを保健だより等でしています。アレルギーのある人は受けられないこともあるので主治医に相談することやどのくらいの期間が効いているか、効果が出るのに2週間位かかることなど基本的なところを伝えています。あと、接種にあたっては、保護者と主治医の判断で実施していただくようにお伝えしています。というのは、先ほどもお話ししたように高校生というのは本当に近い将来、社会人になったり大学生になり1人暮らしを始める人も少なくありません。中には早く結婚して親になっていく子たちもいるわけです。だから、本人ができるようになることだけでなくて、社会人として、また近い将来親となっても覚えていてほしいということを視野に入れての保健指導が必要かなと思っています。最近、朝の健康観察が大切と言われていて、小中学校の先生方はきちんとやっていらっしゃると思うのですが、高校はなかなか難しい部分があります。休むのか、遅れてくるのかよく分からないという生徒もいます。本校では毎朝、短時間ですが職員の朝会をやっており、そこで風邪が流行ってきたとか、どこかのクラスに偏って発生しはじめたというようなことを掴むようにしています。急に増えた場合などは即対応するようにしております。

 吉井先生の学校ではどのような形でお知らせしていますか。

吉井 子どもたちというよりも教職員や保護者への働きかけが中心になるかと思います。元々、呼吸障害のあるお子さんが多く、また抵抗力が弱く感染症にかかると重症化しやすいため、教職員が共通理解を図って組織的な感染症予防に努めています。特にインフルエンザに関しては児童生徒はもちろん、教職員やその家族にも予防接種を勧めています。周りがかからない、子どもたちを守るという意識が高いです。また、同居の家族がインフルエンザを発症した場合、2日間は登校を控えてもらいます。入学説明会や保護者会等で保護者の理解と協力を得ています。過去、新型が流行った時も本校では流行らずに済んだという実績があります。それからスタンダードプリコーションの徹底を教職員に呼びかけています。トイレ介助をしたり、医療的ケアで痰を扱うこともありますので、手洗いはしっかりやるようにしています。また、教職員が子どもたちにうつしてはよくないので調子が悪い時はすぐ病院にかかり、はっきりしてから出勤するというようなことが徹底されています。子どもにとっては教職員も環境の一部ということで、そのような対応をしています。ほかに校内の出入り口には手指消毒剤を設置して来校者に協力をいただいたり、保護者の送迎で登下校をするお子さんが多いのですが、保護者の調子が悪い時は校内への出入りは控えていただき、玄関のインターフォンで担任と連絡をとるよう協力をお願いしています。

 校内に持ち込ませないということは大切ですね。校内、とくに教室が一番の感染場所なってしまう時がありますので、十分に気をつけていきたいところですね。

吉井 そのほかにもインフルエンザが出ると、すぐに対策会議を開きます。インフルエンザに限らず、学校感染症の発生時には、関係者が集まって学校行事や保護者へのお便り、スクールバスの対応も含めて検討し、保護者に発信できるような体制が整っています。早い段階で会議を開いていただけるので非常に有難いです。

 自宅が離れている子どもたちもいらっしゃると思うので、連絡が早いというのは、保護者の方にとっても助かりますね。ところで、熊木先生には今回、保健だよりなどの資料もご用意していただいておりますが。

熊木 草加分校では冬場の感染症に限らず、感染症を普段から予防できるように心がけようという方針で進めています。教育課程の中に職業教育があり、6月には校内実習がありますので、そこで食品関係の商品を扱ったりします。その実習が始まる前に「正しい手の洗い方をしっかり覚えましょう」ということについて、生徒全員にパワーポイントのスライドを見せながら指導しております(下図)。説明をしたあとで全員、洗い場まで移動して実際に手を洗うなど徹底するようにしています。さらに、この時期だけということではなく、手洗いやうがいの定着に結びつけられるように日常的に行うという形もとっております。このパワーポイントのほかにも、冬の時期の保健だよりを資料として持参しました。障害特性もふまえて文字ばかりだとなかなか生徒たちが理解しにくいということもあり、なるべくイラスト等を一緒に入れるようにしています。インフルエンザに関しては、登校開始できる日が変更となったという点が保護者になかなか理解していただけなかったりするので、発症した日から何日目までというのが分かるように図を入れて、この期間は協力してくださいというように促しています。

   

草加かがやき特別支援学校草加分校 熊木美香先生提供