第18回 Q&A「歯と口の健康づくり」

4.「むし歯」について

Q むし歯の原因は何でしょうか。

A. むし歯は,歯垢(プラーク)と呼ばれる歯の表面についた細菌の塊が、糖分から酸をつくり、歯の表面を溶かしてくる病気です。口の中には多くの種類の細菌が常在していますが、その中でもミュータンス連鎖球菌と呼ばれている細菌は、砂糖(ショ糖)からネバネバした多糖をつくって歯の表面に細菌が付きやすい状態を作り出します。そして、その中で、酸を作り出しますので、例えていうならば、水あめの中に酸が産生されているような状況になり、長い時間、歯の表面に酸が作用することになります。細菌が酸を作ることができる糖質は、ブドウ糖などの単糖はもちろんのこと、砂糖(ショ糖)、果糖、乳糖などの2糖類があります。一方、キシリトールなどの代用糖はミュータンス連鎖球菌などが分解できず、酸も産生しません。
ですから、歯の表面に歯垢がついていて、甘いものをダラダラと食べて、歯みがきをしない、そのような生活習慣がむし歯を作る機会を与えてしまっているといえます。むし歯は直接的には細菌により起こる病気ですが、その背景には、生活習慣の問題があるので基本的には良い生活習慣をつくるための保健指導が大切になっているわけです。



むし歯の発生と予防・抑制の要因(文部科学省 学校歯科保健参考資料より)
 

歯垢に糖質が作用すると、歯垢中の細菌はすぐに酸を産生しはじめます。歯の表面にあるエナメル質はpH5.5で溶け出しますが、このpHに至るまでには約3分程度といわれています。そして、再びpH5.5以上に戻るまでには約20分を要するといわれています。したがって、ダラダラと食べ続けることは、pHが下がったままという状態を維持することとなるので、むし歯ができやすくなるということです。

甘いものを食べたら、できるだけ早く「うがい」で甘いものを口の中に残さないようにします。

食べた後、30分は歯みがきをしないほうがよいというのは、レモンをかじったり、炭酸飲料を口の中でブクブクしたりして、歯の表面が酸によって溶け出している状態の特殊な場合で、むし歯(う蝕症)とは違う酸蝕症という病気です。



ステファン曲線

 上の図は4日間歯みがきを中止した歯垢にグルコース(ブドウ糖)を作用させた時の歯垢のpH変化を示しています。糖質が作用するとすぐにpHは低下して約3分ほどでエナメル質を溶かすくらいのpHに達しています。pH5.5を抜けるのに約20分かかっていることがわかります。

 

むし歯は、最初から穴が開いているわけではありません。むし歯のなりかかっている状態は「初期脱灰」といって、エナメル質の表面が白くなってくるという状態からはじまります。むし歯の初期の状態の、白くなっている状態は、その表面についている歯垢を確実に落として、甘いものをダラダラ食べないようにすることで、進行を止めることができます。

一度、穴が開いてしまうと、元の状態には戻せませんが、穴が開く前であれば戻すことが可能です。したがって、子どもたちには、よく歯の表面の状態を観察させて、白くなっているところがないかどうかを確認してもらいましょう。

特に、上の前歯の歯ぐきの近くに変化の表れることが多いので、乾燥させてから、見るといいでしょう。



白く濁った前歯の状態
 

Q むし歯の発生と糖質との関係については?

A. <1>  糖質類を食事時より間食時にとるとむし歯が増加します。また、就寝直前に甘いものをとると危険性が増加します。これは睡眠中は唾液の分泌が減少するため,歯の表面に酸が長くとどまり作用するからです。
  <2>  糖質を含む間食類でも、歯面に付着しやすい粘着性の高いものは口の中にいつまでも糖質が残り、特に溝のある臼歯のむし歯を増加させます。
  <3>  糖質を含む食物を頻回に不規則にとるとむし歯は増加します。そこで間食は一定時間おいて規則的にとることが必要です。