第17回 Q&A「子どもが起こすスポーツ障害」

【疾患】

Q. 柔道をしている高校2年男子です。 ある時、気がつくと足下腿がパンパンに腫れており、受診したらコンパートメント症候群といわれました。
 コンパートメント症候群とは、何でしょうか? 今後、再発しないためには何に注意したらよいでしょうか?

A. コンパートメント症候群とは、下腿や前腕で筋肉の腫れにより、神経・血管が圧迫されて起こるものです。下腿を横断面でみると、二本の骨のほか、筋肉は骨膜・筋膜などによって四つの区画(コンパートメント)に分かれています。そのなかには血管や神経も走行し、コンパートメント症候群は、何らかの原因によりこの区画内の筋肉の圧が時間とともに上がり、血管や神経が圧迫されることから痛みや腫れが起こります。この疾患は、急激な外力で起こる急性型と痛みがあるにもかかわらず、負担のかかる運動を繰り返すことなどで発症する慢性型とがあります。ご質問の例では、以前から痛みがあったのに我慢しながら足払いや受け身を続けていたための慢性型ではないでしょうか。

学校の部活動などでは、あきらかな事故などは別として、痛みを訴えると周りからサボりとみなされ、なかなか自身から言い出せない環境になっている場合も見受けられます。こういう環境を見直し、無理をする前に「痛い」といえる環境づくりを学校内で行っていただければと思います。

 

Q. マラソン大会に向けて走りこんでいた生徒が、脛が痛むので受診したら、 シンスプリントと言われました。運動再開にむけて、どんなことに注意したらよいでしょうか?
 また、養護教諭として、マラソン大会前の保健指導で、シンスプリントなどのケガ予防を伝えたいと思いますが、指導のポイントを教えてください。

A. シンスプリントは、脛の内側に痛みのおこる障害で、中学校生や高校生の陸上競技の中・長距離の選手や、サッカーなど走りこむ競技で多くみられます。特にまだ走り慣れていない新人選手やシーズン当初は平気でも練習がきつくなる夏の時期に発生が多くなる傾向があります。ご質問のようにマラソン大会などの練習で過度に走り込んだりした時にも発生する可能性があります。

シンスプリントになりやすい条件としては、普段は運動をしていない、扁平足や回内足(足の内側に重心がかかる)、足関節の柔軟性の低下や下腿の筋力不足、足部の疲労による衝撃勧奨機能の低下、固いグランドや路面での練習、かかとがすり減ったりしてクッション性が低い靴の使用などいろいろな要因があります。

運動の再開に向けては、まず慢性化を避けるために運動量を減らし、アイスマッサージや外用薬の使用、足底や足関節周囲の筋力の強化、ストレッチを行います。靴に中敷きを入れることも効果的で、クッション性の良い踵の安定した靴選びも重要です。

指導のポイントとしては、十分なウォーミングアップを行うとともに練習を終えた時のクーリングダウンにも時間をかけるようにしてください。また、コンパートメント症候群の時にもお話ししましたが、子どものほうから体の異常を申告しやすい環境づくり、そういう子どもを休ませる健康管理に配慮してください。

Q. オスグッド病とはどんな疾患ですか。また、予防や応急処置の方法を教えてください。

A. オスグッド病は、成長期における子ども特有の疾患です。膝のお皿の下の骨(脛骨)の成長軟骨が成長する時期に膝を伸ばす力の繰り返しによって、その成長軟骨部が剥離するために起こります。脛骨粗面が徐々に隆起し、痛みが生じてきます。特に小学校高学年から中学生くらいのサッカー選手に多くみられます。運動を休むと痛みがなくなり、運動をすると痛みが再発するという特徴があります。なかには正座ができない場合もあります。予防としては、成長期の一過性の病気ですので、この時期の運動を控え、膝の下に痛みがあれば早めに運動を休んで様子を見ましょう。応急処置としてはアイスマッサージなどですが、大腿四頭筋のストレッチング(写真下)も効果があります。痛みがなければ運動の継続も可能ですが、この時期の3〜6カ月くらいの間は運動によって症状が強くなりますので、基本は安静ですがスポーツ前後のストレッチやアイスマッサージ、場合によっては治療用のベルト装着をしたうえで運動を行うことになります。

 

Q. 子どもの疲労骨折というのは多いのでしょうか。また、それはどういうことで起こるのでしょうか。

A. 成長途中の子どもは大人に比べて体や骨も柔らかいですので、疲労骨折というのはそんなに多くはありません。ただ、スポーツを過度にやりすぎると同じ動作をする部位にかかる力の繰り返しで起こすことがあります。同じ運動ばかり繰り返さず、効率よく適度に運動することが肝心です。

Q. 子どもに増えているスポーツ障害はどんなものがありますか。その原因、予防法なども併せて教えてください。

A. 先ほどもありましたが、成長期にある子どものサッカーが盛んになるのに伴ってオスグッド病が増えています。ほかにも野球肘や野球肩など競技別によるスポーツ障害が近年の超音波などの検査法の進歩で以前より診断がつくようになりました。
いずれにしろその競技によって同じ動作を繰り返すことで、膝・肘・肩などその特異な部位に障害が起こりやすくなりますので、予防としては、その競技に合ったウォーミングアップや練習後のクーリングダウン、長時間同じ動作をする運動を避けるなど練習法の工夫が重要です。スポーツの種目を限定せず、色々なスポーツに親しませることも大切です。

Q. 捻挫はなぜくせになりやすいのでしょう。

A. 捻挫は程度の差はありますが、靭帯損傷の状態をいいます。応急処置の基本はRICEですが、損傷の程度・部位によって固定の仕方や負担軽減をする期間も違います。捻挫が癖になりやすいというのは、まだ治らないうちに運動を再開し、また捻挫を繰り返すことで習慣化してしまうということです。