第12回「児童生徒の耳・鼻・のどの健康」

3.鼻の健康

Q. 子どもに多い鼻の疾患はどんなものがありますか。

アレルギー性鼻炎

図1 1998年と2008年の有病率(鼻アレルギー診療ガイドライン2013)
図2 年齢層別有病率(鼻アレルギー診療ガイドライン2013)

 アレルギー性鼻炎とは鼻の粘膜におけるアレルギー疾患を指し、くしゃみ、鼻みず、鼻づまりがその主な症状です。
 また気管支喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性結膜炎などのアレルギー疾患をしばしば合併することが知られています。
 アレルギー性鼻炎は通年性アレルギー性鼻炎と季節性アレルギー性鼻炎に分類できます。通年性アレルギー性鼻炎の多くはハウスダストの中の主としてチリダニ(ヤケヒョウヒダニ、コナヒョウヒダニ)が原因で、季節性アレルギー性鼻炎の多くはスギ花粉症に代表される花粉類によって起こります。

 図1は耳鼻咽喉科医とその家族を対象とした全国調査によるアレルギー性鼻炎の有病率を示しています。
 1998年から2008年の10年間でいずれも著しい増加をみました。
 中でも特にスギ花粉症の増加が目立っています。
 図2は年齢層別有病率ですが、学童期を含めた若年層では通年性アレルギー性鼻炎が高率であり、中高年層ではスギ花粉症が高率に見られます。
 アレルギー性鼻炎の主な症状はくしゃみ、鼻水、鼻づまりですが、その他に、眼、のど、皮膚の症状、喘鳴(呼吸の際発する「ゼーゼー」、「ヒューヒュー」という音)、頭痛、寒気などの症状も出ますし、腹部膨満感、下痢などの胃腸の症状も時に出ることがあります。眼、のどの症状は花粉症に多く、ハウスダストアレルギーでは花粉症に比べ喘鳴などの気管支症状が多くみられるのが特徴です。
 アレルギー性鼻炎の原因物質は多くのものが知られていますが、中でもハウスダストとともに重要な原因となるのは花粉であり、原因花粉は現在知られているだけで60種類を超えます。
 原因となるのは原則として風媒花粉ですが、ハウス栽培でのイチゴ花粉症や人工授粉作業で起こるリンゴ花粉症など特殊な環境下では虫媒花粉も原因となり職業性花粉症と呼ばれています。
 子どもでは女子より男子に多くみられ、原因はハウスダスト・ダニによる通年性アレルギー性鼻炎が最も多いのですが、近年ではペット、花粉を含めた多種類の原因を持っていることも珍しくなくなりました。またアトピ−性皮膚炎、気管支喘息などの他のアレルギー疾患を合併しているものが多くみられます。アトピー性皮膚炎の発症のピークは乳幼児期であり、気管支喘息のそれは乳幼児期後半から3歳までの間であり、アレルギー性鼻炎の初発のピークは5〜6歳頃です。
 また、子どもの場合蓄膿症(副鼻腔炎)を合併している頻度は成人よりも高率です。鼻すすりを繰り返すため、あるいは鼻粘膜の腫脹などのため滲出性中耳炎も高率(36%)に合併します。
 治療方法は大きく分けて原因物質(抗原)の除去と回避、薬物療法、抗原特異的免疫療法(減感作療法)、手術の4つがあります。
 はじめに原因物質(抗原)の除去と回避についてお話します。これは治療の第一歩で患者さんのみにできることです。
 まずはダニの除去についてです。

・ 掃除機がけは、吸引部をゆっくりと動かし、一畳あたり30秒以上の時間をかけ、週に2回以上行います。

・ 布張りのソファー、カーペット、畳はできるだけやめましょう。

・ ベッドのマット、ふとん、枕にダニを通さないカバーをかけます。

・ ふとんは週に2回以上干すようにします。困難な時は室内干しやふとん乾燥機で、ふとんの湿気を減らします。週に1回以上掃除機をかけます。

・ 部屋の湿度を50%、室温を20〜25℃に保つよう努力します。

・ フローリングなどのホコリのたちやすい場所は、拭き掃除の後に掃除機をかけます。

・ シーツ、ふとんカバーは週に1回以上洗濯します。

次はペットについてです。

・ できれば飼育をやめます。

・ ペットと、ペットの飼育環境を清潔に保ちます。

・ 床のカーペットをやめ、フローリングにします。

・ 通気を良くし、掃除を励行します。

・ フローリングなどのホコリのたちやすい場所は、拭き掃除をした後に掃除機をかけます。


 続いて薬物療法についてです。薬物には飲み薬や点鼻薬、注射薬など多種類のものがあります。
 副作用によって生じると考えられる眠気や口の渇き、めまい、頭痛、胃腸障害は市販の鼻炎用薬剤に繁用されている古いタイプの抗ヒスタミン薬によくみられます。
 医師が処方できる抗ヒスタミン薬は新しいものほど眠気や口の渇きなどの副作用が軽減され、古いタイプの抗ヒスタミン薬より鼻づまりに対する効果を含め全般的に効き目もよくなっていますので、アレルギー性鼻炎に罹患している児童・生徒には医師による診察を受けたうえ薬剤の投与を受けることをお勧めします。
 続いて抗原特異的免疫療法(減感作療法)です。特に重症の患者さんには、対症療法と並行して、アレルギー性鼻炎の原因に対しアプローチする根治療法が行われる場合があります。「抗原特異的免疫療法」は「減感作療法」とも呼ばれ、アレルギー物質の抽出液を最初は低い濃度から注射などで投与し、その後少しずつ濃度を上げ、抗原に対する免疫を獲得させる方法です(皮下免疫療法)。治療は2年以上続けることが必要です。抗原特異的免疫療法(減感作療法)は他の治療では得られないアレルギー性鼻炎の根治の可能性のある唯一の治療法でありますが、まれながら重篤な全身的副作用のみられることがあり、また数年にわたり継続的通院が必要なことが普及を阻んでいます。
 抗原特異的免疫療法(減感作療法)は皮下注射が一般的ですが、最近では舌下投与法が注目されており、現在治験中であり(2013年秋には保険収載予定です)、一般に広く使われる治療法として期待されています。
 最後に手術療法についてです。手術療法の第一の目的は鼻づまりの改善にあります。最近ではレーザー手術など、出血なしに外来でできる方法が普及してきました。比較的簡単にでき、粘膜の表面を焼くと反応が弱くなることから、くしゃみ、鼻水にも適応が広がりましたが、再発もみられます。
 鼻水を分泌する腺を刺激する神経を切って、鼻水をとめる手術もあります。

急性鼻炎
 急性鼻炎とは一般に鼻かぜとよばれているもので、その原因の大部分はウイルスといわれており、続いて細菌の二次感染を生じることもあります。
 症状は、鼻づまり、鼻水、くしゃみなどです。急性鼻炎のみであれば、発熱はないか、あっても微熱程度です。
 多くは数日〜1週間で自然治癒しますが、細菌性の二次感染、混合感染が生じた場合は、鼻水が粘性あるいは膿性になり、さらに喉の方へ流れる鼻水による咳を伴います。
 通常1〜3週間で軽快に向かいますが、急性副鼻腔炎に移行した場合は、数週間に及びます。
 初期の症状は無色透明の水様性の鼻水、鼻づまりおよびくしゃみであるため、鼻アレルギーは、急性鼻炎の症状と類似し、鑑別すべき疾患の一つです。
 治療方法については、急性鼻炎は、かぜ症候群が原因のことがほとんどであり、発熱、鼻水、くしゃみや咳などに対する対症療法、二次感染予防と治療およびウイルスの伝播の予防をします。
 親には安静、加温加湿と水分や栄養補給を指導します。寒冷刺激は鼻粘膜の腫脹をまねき、鼻づまりを増悪させるため避けるようにします。
 薬物療法として解熱鎮痛薬、消炎酵素薬、抗ヒスタミン薬や非ステロイド系抗炎症薬が中心になります。

副鼻腔炎

 副鼻腔とは鼻の穴の中のことを「鼻腔」といいますが、この鼻腔のまわりには、骨で囲まれた空洞部分が左右それぞれ4個ずつ、合計8個あり、鼻腔とつながっています。この空洞部分が「副鼻腔」です。
 4つの副鼻腔は、目と目の間にある「篩骨洞(しこつどう)」、その奥にある「蝶形骨洞(ちょうけいこつどう)」、目の下にある「上顎洞(じょうがくどう)」、鼻の上の額にある「前頭洞(ぜんとうどう)」です。副鼻腔は小さな通路で鼻腔とつながっていて(自然口)、普段は空気が出入りし換気されています。
 副鼻腔炎とは細菌やウイルスといった病原菌が鼻や副鼻腔の粘膜に増殖して炎症を起こし、あるいは鼻アレルギーによって鼻の粘膜が腫れ、その結果、膿や粘液が排出されずに副鼻腔内にたまる病気です。罹患期間により「急性」、「亜急性」と「慢性」があります。
 1960年代までは非常に多くみられる病気でしたが、生活環境や食環境、医療環境の変化により、1970年代以降、患者さんの数はかなり少なくなりました。しかし、いまだによくみられる病気であることに変わりはありません。

■急性副鼻腔炎
 急性副鼻腔炎とは主としてウイルスが原因のかぜなどの感染を契機に細菌やウイルス感染によって副鼻腔に急性炎症が生じている状態をいいます。急性副鼻腔炎とは、発症1か月以内に症状が消失するものをいいます。膿性鼻汁(粘り気を帯びた黄色っぽい鼻水)、鼻閉(鼻づまり)、後鼻漏(喉の方へ流れる鼻水)、咳嗽(咳)といった呼吸器症状を呈し、全身倦怠感、発熱、頭痛、頬部痛、頬部発赤・腫脹、嗅覚障害などといった急性炎症症状を伴います。
 幼少時は特にウイルス感染によるかぜを反復しやすく、併せて鼻副鼻腔の炎症を起こすことがあります。RSウイルス、アデノウイルス、ライノウイルスなどのウイルス性上気道炎を契機に、鼻粘膜の腫脹や鼻汁増多が生じ、副鼻腔と鼻腔をつないでいる開口部(自然口)が塞がると、副鼻腔は閉塞腔となり、粘液などの貯留液を生じます。これは、ウイルス性副鼻腔炎とされ、かぜの改善とともに自然治癒します。このうちわずか0.5%〜2%が細菌性副鼻腔炎に移行するとされ、ウイルス性上気道炎罹患後、10日以上経過しても症状が軽快しない場合、また5〜7日後に症状が悪化した場合は、細菌性副鼻腔炎と診断して適切な抗菌療法が必要になります。
 確定診断には、鼻・副鼻腔炎の単純X線撮影検査が必要です。
 眼窩(目の入っているくぼみ)内合併症や頭蓋内合併症が疑われる場合は副鼻腔CTもしくは副鼻腔MRを撮影し、評価する必要があります。
 治療には抗菌療法を行います。また、粘液を溶かしたり線毛の働きを高めたりして痰や鼻水を出しやすくする去痰薬(気道粘膜修復薬、気道粘液溶解薬、気道潤滑薬)や、不要になったタンパク質を分解し鼻水の粘りを改善したりする消炎酵素剤(蛋白分解酵素、多糖体分解酵素)を併用することもあります。
 補助療法としては鼻汁吸引や、エアロゾル療法として抗菌剤の入ったネブライザー(副鼻腔の腫れている粘膜に直接霧状の薬がかかるよう吸入する治療)を行います。
 急性副鼻腔炎はまず保存的療法が第一選択となりますが、急性副鼻腔炎による鼻性眼窩内合併症や、頭蓋内合併症をきたした場合は手術療法の適応が検討されます。
 合併症・予後については、基本的には、抗菌療法により経過良好な疾患です。ただし、アデノイド増殖症やアレルギー性鼻炎、鼻中隔彎曲、う歯などにより副鼻腔の炎症が慢性化すると、慢性副鼻腔炎を起こします。

■慢性副鼻腔炎
 慢性の副鼻腔炎とはいわゆる「蓄膿症」とも呼ばれています。副鼻腔の炎症により鼻閉(鼻づまり)、鼻漏(鼻水)、後鼻漏(喉の方へ流れる鼻水)、咳嗽(咳)などの呼吸器症状を呈する疾患で、3か月以上これらの症状が持続するものが慢性副鼻腔炎です。急性同様、全身倦怠感、発熱、頭痛、頬部痛、頬部発赤・腫脹、嗅覚障害などを伴うこともあります。慢性の場合、ときに鼻茸がみられ、鼻腔をふさいで鼻閉(鼻づまり)をひどくします。鼻茸とは鼻の粘膜が腫れてポリープ状に大きくなった粘膜の塊です。
 上顎洞が15歳頃に成人とほぼ同じ大きさになり、その前後で副鼻腔炎の病態や治癒過程に様々な違いがみられることから、一般に15歳以下の小児に発症するものを小児副鼻腔炎とし、成人の副鼻腔炎と区別します。
 原因については慢性副鼻腔炎は、急性副鼻腔炎の治癒の遷延化や急性炎症の反復によって発症します。
 遺伝的要因はいまだ確立されていません。
 診断には単純X線検査を行います。
 治療方法については、小児の慢性副鼻腔炎は自然治癒することが多いので、原則として保存的治療を行います。
 鼻をうまくかむことができない小児では鼻処置、特に鼻汁の吸引が重要であり、他の治療効果を高めるにも有効です。
 また、抗菌薬などを含む鼻ネブライザーを行います。本治療法の効果を高めるには鼻処置が欠かせません。
 薬物療法としてのマクロライド少量長期療法は、マクロライド系抗生物質の抗菌活性ではなく粘液分泌抑制や抗炎症効果を期待して通常量の半量を2〜3ヶ月間投与します。
 小児の慢性副鼻腔炎では、上顎洞後鼻孔鼻茸や重症例など、手術適応は非常に限られます。内視鏡下鼻内手術も篩骨洞の発育を考慮すると10歳以降に行なう方がよいです。
 合併症・予後については、小児の慢性副鼻腔炎は精神・情緒面に大きな影響を及ぼします。特に鼻づまりは注意力散漫や情緒不安定、睡眠障害の原因となります。睡眠障害が長引くと睡眠時無呼吸症候群を発症し、傾眠傾向や思考力の低下、多動性、易怒性をもたらします。鼻づまりによる嗅覚障害も情緒面に少なからず影響を与えます。後鼻漏は耳管咽頭口周囲を汚染し、急性中耳炎や滲出性中耳炎の発症および遷延化の要因となります。しかし、小児の慢性副鼻腔炎は成人と比較して予後は良好で、増悪と寛解を繰り返しているうちに、その多くは自然治癒します。

 

Q. 花粉症の現状や、対処について教えてください。

花粉症
 花粉症とは、スギなどの花粉が抗原(アレルギーの原因物質)となって起こるアレルギー疾患の一種で、主にアレルギー性鼻炎とアレルギー性結膜炎が生じます。
 花粉が鼻に入ると、直後にくしゃみ、鼻水が生じ、少し遅れてから鼻づまりが生じます。目に花粉が入ると早くから目がかゆくなり、涙が流れ、目が充血してきます。花粉の抗原成分が鼻から喉へ流れ、喉のかゆみ、咳を生じることもあります。また鼻づまりによる頭痛、鼻や喉の炎症反応による微熱、だるさなどの症状に悩まされます。
 花粉症を引き起こす植物は多岐に渡り、日本では約60種類が報告されています。しかし、代表的なものはやはりスギで、花粉症全体の多くの部分を占めると考えられています。
 第二次世界大戦後の日本の林業において、1958年以降は天然林をすべて伐採して人工造林するという拡大造林政策のもとで、スギという単一樹種が短期間に一斉に植えられてしまった一方、1960年前後の木材輸入自由化により、日本のスギ林業は致命的な打撃を受けました。近年花粉生産旺盛な樹齢に達したスギが大量の花粉を飛散して患者も大量発生し、ひとたび発病したスギ花粉症は早い時期での自然治癒が望めないことから、いま患者は累積的に増えていると考えられています。
 一方、北海道ではスギ花粉の飛散が極めて少なく沖縄にはスギが全く生息しません。したがってスギ花粉症は北海道・沖縄にはほとんどみられません。関東・東海地方では、ヒノキ科花粉による花粉症もみられますが、スギ花粉症の患者さんが多くみられます。関西では、スギとヒノキ科の植林面積はほぼ等しく、年によってはヒノキ科花粉の飛散の方が多いこともあります。また、北海道にはシラカバ花粉症が多いなど、地域による特徴があります。
 図1は主な花粉症原因物質の開花時期つまり飛散時期を示しています。

図1 主な花粉症原因植物の花粉捕集期間(開花時期)※札幌市、仙台市、相模原市、浜松市、福岡市におけるデータ(鼻アレルギー診療ガイドライン2013)

 花粉の飛散季節によって樹木花粉季節(tree season)、イネ科花粉季節(grass season)、雑草花粉季節(weed season)と大別されますが、個々の原因植物の開花期に一致する花粉飛散時期を知ることが重要となります。
 ズギとヒノキの花粉は早春に飛び、中でもスギは北海道と沖縄を除く地域では空中花粉のトップを占めています。
 これに引き続きイネ科の花粉が秋まで次々と開花します。数あるイネ科の中で花粉症をおこしやすいのはカモガヤ、オオアワガエリ(チモシー)、ナガハグサ、ホソムギなどに代表される帰化種の牧草です。帰化種の花粉は春から初夏に飛散します。在来種の花粉は秋に飛散しますがこれによる花粉症は多くはありません。
 キク科のブタクサ属やヨモギ属の花粉がお盆明けから秋にかけて、そしてアサ科のカナムグラの花粉も秋に飛び花粉症の主な原因となっています。
 くしゃみ、鼻みず、鼻づまりが2週間以上続くのが花粉症の特徴ですが、かぜとの違いはあるのでしょうか。
 かぜではくしゃみは1週間以内に治り、出る鼻みずも最初は透明ですが次第に粘稠度を増し色もついてきます。

図2 かぜと花粉症状の違い

 またかぜでは目に症状が起こることはほとんどありません。
 対して花粉症ではくしゃみは長期間続き、鼻みずはいつまでも水のように透明でサラサラであり、目の症状を高率に伴います(図2)。
 花粉症の治療については、花粉症は季節性アレルギー性鼻炎とも呼ばれ、アレルギー性鼻炎の一種です。したがってアレルギー性鼻炎と基本的には同じ治療が行われます。以下に花粉症特有の治療法のみお示ししますので、残りは前述しておりますアレルギー性鼻炎の治療の項を参照してください。
 〈抗原の除去と回避について〉
 鼻や目に入る抗原の量を減らすことは、症状の悪化やQOLの低下を防ぐために必要です。これは治療の第一歩であり患者さんにしかできないことです。
・ 花粉情報に注意します。
・ 花粉の多い時は外出を控え、外出時にマスク、メガネを使います。
・ 表面がけばだった毛織物などのコートの使用は避けます。
・ 帰宅時、衣服や髪の毛をよく払ってから入室します。洗顔、うがいをし、鼻をかみます。
・ 飛散の多い時は窓、戸を閉めておきます。換気時の窓は小さく開け、短時間にとどめます。
・ 飛散の多い時のふとんや洗濯物の外干しは避けます。
・ 掃除を励行します。特に窓際を念入りに掃除します。
 〈薬物治療について〉
 花粉症ではアレルギー性結膜炎の合併がよくみられます。その場合には点眼薬が使われます。
 点眼薬では化学伝達物質遊離抑制薬、抗ヒスタミン薬が主体です。症状が激しいときにはステロイド点眼薬が使用されることがありますが、眼圧の上昇に注意が必要です。
 薬剤を上手に使い分ければ、花粉が多い年でも5〜6割の患者さんが大きな副作用もなく、花粉症の症状がほとんど出現せずに、高いQOL(クオリティオブライフ:生活の質)を保ったままで花粉飛散の季節を過ごせることが確認されています。また、花粉の飛び始めから治療を開始する「初期療法」が有効であることが証明されています。

 

Q. 鼻のけがやその時の対処で注意すべきことを教えてください。

Q1. 鼻出血の対応について教えてください。

A1. 日頃よく見かけるものに鼻出血(鼻血)があります。
 もともと鼻の粘膜には血管がたくさんあり、ちょっとした刺激で簡単に出血します。赤い血を見ると本人も周囲の人もびっくりして、混乱しがちです。しかし、ほとんどの出血は、適当な対処をして安静にしておれば、しばらくすると止まりますので心配ありません。
  鼻出血の原因は大きく二つに分けられます。全身的な問題と、局所的な問題です。全身的な問題としては血液疾患(白血病、貧血)、循環系の疾患(高血圧、動脈硬化症)、肝臓の疾患(肝硬変)などで血管が脆くなったり、血液が薄くなったりした時にでやすくなりますが、頻度としてはそう多いものではありません。鼻血の多くは副鼻腔炎(いわゆるちくのう症)やアレルギー性鼻炎、また鼻中隔弯曲症など鼻の中に原因がある局所的な問題です。特に、鼻の入口に近い部分(キーゼルバッハ部位とよばれます)は血管がたくさん集まっていて、指を入れたり、擦ったりすることで簡単に出血します。
 では、実際に鼻血がでたら、どの様に対処したらよいでしょうか。

 1)一番大切なことは決してあわてないことです。鼻血だけで命を落とすことはまずありません。とくに周囲の方があわてると、本人も不安になってよけい興奮し、血圧が上がってますます出血することになります。
 2)鼻の入口に近い部分の出血はまず心配ありません(子どもの出血のほとんどはこれです)。一般的に言って、最初に鼻の入口から出てきたものは鼻の前の方の出血、最初にのどの方に流れてきたものは鼻の後ろの方からの出血が多いようです。
 3)鼻血が出ているときに、仰向けに寝ていたのでは、血は鼻の後ろから口の中に流れ込み、いつまでたっても止まりません。また口の中に入った血液は唾液と混じって余計にたくさん出たようにみえます。出血した時には、座って頭を少し前に傾け、出血している側の鼻に綿花を詰めます。そして鼻翼をつぶすように強くおさえ、5分ぐらいそのままじっとしておいてください。5分という時間はかなり長く感じられますが、それより短くてはなかなか止まりません。止まったら、綿花はそのままにして、1時間ぐらい安静にしておいて下さい。
 4)口の中に流れ込んだ血液は飲み込まずに吐き出して下さい。飲み込むと気分が悪くなるし、出血した量も分からなくなります。
 5)逆に鼻の奥の方からの出血はなかなか止まらないことが多く、注意が必要です。3)のような処置を繰り返しても止まらないとき、また最初からのどの方へたくさん流れてくる場合などには耳鼻咽喉科の受診が望まれます。

Q2.サッカーの練習中に相手選手の肘が顔面に当たり、顔が腫れています。どうすればいいでしょうか?

A2. 鼻は顔面の中にある固有鼻腔、副鼻腔と顔面から体表に突き出た外鼻から成り立っています。顔面は中にある脳や眼球、そして鼻腔を守るために前頭骨、上顎骨、頬骨などと呼ばれる硬い骨から出来ているのに対して、外鼻は非常に薄い鼻骨や柔らかい軟骨で組み立てられています。顔面に外圧がかかると外鼻部分は簡単に骨折や偏位を来すのに対して、顔面自体はよほどの力でないと壊れないようになっています。外鼻は車でいえばバンパーに当たる部分で、壊れることで外からの力を吸収し、本体に影響が及ばないようにする役目を果たしているといえます。では、顔面にボールや相手の肘やすねなどが当たったときにはどうすればいいでしょうか。まず、顔面本体に影響が及んでいないかどうかをチェックする必要があります。意識がぼんやりしている、強い頭痛を訴える、ものが見えにくい、二重に見える、口が開かない、歯の噛み合わせがおかしい、顔面がしびれるなどの症状は、鼻から周囲の器官に影響が及んだ可能性を示唆します。医療機関での救急対応が望まれます。一方、これらの症状がない場合には慌てる必要はありません。鼻の付け根が腫れていたり、鼻筋が曲がっている場合、また多量の鼻出血がある場合などは鼻骨骨折が疑われます。まず止血を試みます。止血が出来れば、後日専門機関を受診するようにします。骨折があっても、受傷後1週間程度であれば、外来にて整復が可能です。鼻閉などの鼻症状、明らかに美容上の形態異常がなければ、鼻骨骨折があっても保存的に経過観察することも少なくありません。

 

Q. そのほか、鼻の健康で留意することはありますでしょうか。

A. 鼻・耳・のどのつながりについて
 鼻を強くかんだら耳に響いた、という経験は誰でも持っているものです。これは、鼻の奥と耳が「耳管」という管でつながっているために起こります。また、のどと鼻の奥の移行部は一つの空間になっており、そこは空気の通り道でもあります。このように「耳・鼻・のど」はつながっているのです。

A. 鼻腔の働きと空気の流れについて
 通常は鼻から呼吸(鼻呼吸といいます)をしますが、このとき吸気、呼気ともに鼻腔の中を通ります。固有鼻腔といわれ、のどにつながる空間です。鼻は呼吸器官として空気を暖める(加温)、湿り気を与える(加湿)、ほこりを取る(除塵)という重要な働きがあり、空気を適切な状態にして肺に送っています。鼻が詰まると鼻呼吸ができなくなり、口呼吸をするようになります。口呼吸には除塵の作用はありません。また、口を開けていることで口が乾いてしまいます。
 また、鼻は嗅覚という感覚器であると同時に共鳴の器官でもあり、構音に重要な働きがあります。そのため鼻が詰まると鼻声になります。
 耳管は鼻の奥(副鼻腔)と中耳(鼓室)をつなぐ管です。強く鼻をかむと圧力がかかり耳管を通じて、副鼻腔の病原体が中耳に入り、中耳炎の原因となります。

A. 正しい鼻のかみ方について
 ・片方ずつ静かに数秒かけてゆっくりかみましょう。
 ・強くかまないようにしましょう。
 ・1回でかみきれないときは、反対側の鼻をかんでみましょう。
 ・鼻をかんだ後の手は、何かを触る前に手を洗いましょう。

A. 一気に鼻をかもうとすると…
 強く鼻をかもうとすると、耳管を通じて鼻から中耳へと空気が入り耳がポアンと詰まったような感じになります。
 その際に起こる耳の違和感は、たいていは自然に治まります。しかし、鼻水には病原体がいることが多く、耳管から病原体が入り急性中耳炎を起こすことがあります。

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