第12回「児童生徒の耳・鼻・のどの健康」
 

 3月3日の耳の日。また、春はスギ花粉の飛散もピークを迎え、くしゃみや鼻水に悩まされる方々もいらっしゃるかと思います。また、4月からは学校健診の時期でもあります。
 そこで今回の特集は、「児童生徒の耳・鼻・のどの健康」をテーマに、専門医の先生方に耳鼻咽喉科領域の学校健診や疾患の予防、ケアなどについてお聞きしました。

ご回答者(50音順)
一般社団法人日本耳鼻咽喉科学会学校保健委員会 委員
朝比奈 紀彦 先生
井上 靖二 先生
宇高 二良 先生
大島 清史 先生
沖津 卓二 先生
上村 正行 先生
菊守  寛 先生

1.学校での耳鼻科健診

――学校の耳鼻科健診はどういう目的でどんな検査をするのでしょうか

――耳鼻科健診で「受診が必要」という場合は、どうすればいいでしょうか

――学校の定期健診は6月末までに行わなければいけないのですが、特にまだ4月ころは花粉症の児童生徒が見受けられます。その時期の耳鼻科健診は避けた方がいいのでしょうか

――耳鼻科健診受診前の留意すべき児童生徒または保護者への保健指導を教えてください。

――耳鼻科健診で必要な器材の管理で注意すべき点を教えてください

――そのほか、耳鼻科健診で留意することはありますでしょうか


1.学校での耳鼻科健診

Q. 学校の耳鼻科健診はどういう目的でどんな検査をするのでしょうか。

A. 児童生徒が健康な学校生活を送れることを目的として耳鼻咽喉科領域の健診をします。

具体的には

1.児童生徒が学校生活や社会生活を営む上でコミュニケーションに必須の聞こえと音声言語のチェックをします。聞こえはオージオメータを使って左右の耳の聴力を測定し、難聴の有無をチェックします。音声言語は児童生徒との会話や絵カードを使って音声異常や構音・言語異常をチェックします。耳鏡を用いて外耳道、鼓膜を視診し、聞こえに影響のある所見をチェックします。又、舌圧子を用いて口腔、咽頭を視診し、聴診も含めて音声言語異常を、更には嚥下障害、睡眠呼吸障害を来す咽頭所見をチェックします。

2.良好な鼻呼吸が営まれているかどうか鼻鏡を用いて鼻腔を視診し、鼻閉、鼻漏を来す鼻の所見をチェックします。

3.昼間のいきいきした学校生活には健康な睡眠が必須です。夜間に睡眠呼吸障害を惹き起こす鼻閉、扁桃肥大、アデノイド(咽頭扁桃肥大)、肥満などを視診でチェックします。夜間の睡眠動態は保健調査票から情報収集します。

4.アレルギー素因に起因する花粉症も含めたアレルギー性鼻炎を保健調査票、視診でチェックします。

5.こころの問題に起因する心因性難聴の疑いを聴力検査成績と本人との会話の中での聞こえの反応との乖離からチェックします。聞こえの検査から児童生徒の抱えるこころの問題の解明に迫ります。

 

Q. 耳鼻科健診で「受診が必要」という場合は、どうすればいいでしょうか。

A. 耳鼻咽喉科健康診断で何らかの所見が判定された場合、所見は児童生徒並びに保護者に通知され医療機関への受診が必要となります。その時、健康診断結果のお知らせの所見の程度、症状により受診の方法は2つに分けられます。
 一つは健康診断の時点で視診、聴診、選別聴力検査などで明瞭な所見、症状を認め、健康な学校生活の営みに影響を与えていると考えられる場合です。もう一つは視診、聴診上所見はあるがその程度や症状が軽度で健康診断の時点では学校生活にそれほど影響を与えていない場合です。前者の場合は早急な医療機関の受診が必要です。後者の場合、所見の存在を本人並びに保護者に知らせ、理解を得た上で注意して経過観察することとなります。その後、所見の症状が変化、増悪した場合その時点で医療機関の受診となります。早急な受診か経過観察かは耳鼻咽喉科学校医が判断し、健康診断結果のお知らせで指示、助言致します。受診の最終決断は本人並びに保護者に委ねられる訳ですから所見に対する正しい理解が何よりも求められます。健康診断結果のお知らせと一緒に所見の意味する内容の書かれた解説文が同時に配布されますので本人並びに保護者は解説文を熟読理解した上で医療機関を受診することが肝要です。

 

Q. 学校の定期健診は6月末までに行わなければいけないのですが、特にまだ4月ごろは花粉症の児童生徒が見受けられます。その時期の耳鼻科健診は避けた方がいいのでしょうか。

A. 花粉の飛散時期の耳鼻咽喉科健診を避けなければいけない理由は何もありません。花粉に反応する耳鼻咽頭所見を健診で判定し、正しい情報を本人並びに保護者に提供することは大切なことです。

 

Q. 耳鼻科健診受診前の留意すべき児童生徒または保護者への保健指導を教えてください。

A. 単に健診で耳・鼻・咽頭・喉頭の病気を見つけるだけでなく、耳鼻咽喉科領域の感覚器の発達の度合いを知るよい機会となります。保健調査票で自分の今の状態をチェックして、気になる処は担任と相談して健診に臨んで下さい。
 ※小学1・2年生や特別支援学校の児童生徒さんは健診前に校医の写真や健診風景の写真を見せておいたり、実際に使用する鼻鏡、耳鏡、舌圧子などの道具を見せておいてください。内科や眼科健診と異なり耳鼻咽喉科健診は道具を使いますので少しでも恐怖心を無くしておいてください。

 

Q. 耳鼻科健診で必要な器材の管理で注意すべき点を教えてください。

A. 健診前には、聴力検査は事前に実施しておいてください。またオ―ジオメ―タの定期校正は必要です。地区により校正の間隔は異なります。
 健診時には、机、椅子、側燈、トレイ、タオル、消毒器具などは配置と同時に事前に校医と相談してください。耳鏡、鼻鏡などは一括して煮沸消毒ないしオートクレーブ消毒をして健診に臨んでください。舌圧子は使い捨てが一般的ですが、健診前に児童生徒数を数人超える量を確保し、かつ捨てる場所(ナイロン袋・ゴミ箱など)をはっきりさせておいてください。

 

Q. そのほか、耳鼻科健診で留意することはありますでしょうか。

A. 健診前には器具、道具、記録者、保健調査票を読み上げる人などの配置を校医の先生と事前に相談しておいてください。保健調査票を健診前にチェックを希望される校医の先生もいますので確認してください。耳鼻咽喉科校医は1人で最低でも2校、最高40数校受け持っています。健診日時は必ず校医と確認の程お願いします。
 健診時には医師の前に立ったとき必ず自分の名前を「○○です。」といわせるようにしてくだい。「宜しくお願いします。」と続けるとなお良いです。これは言語発達のチェックになります。(小学3年まで) 小学低学年には「ことばのチェック」が重要になります。特に順番待ちの生徒に静かに待つように指導して下さい。校医の先生の耳・鼻・のどを視る順番は異なりますので確認しておいてください。

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