第8回「学校保健委員会の立ち上げを巡って」

学校種での悩みの違い

衞藤 では、まず、学校保健委員会を企画するときは、どのようにお膳立てするのでしょうか。高校ではいかがでしょう。

櫻井 高校では、校務分掌ごとにすべての行事を企画していく形になりますので、学校保健委員会も保健部という組織で保健主事が中心になって動いていきます。この形は組織で動くという点で比較的小学校や中学校よりも体制が取りやすいのではないかと思います。ただ、各部が計画をして動いていくために学校全体の会議も多くなりがちです。
例えば本校は部活も盛んで、全国で一番になっているクラブやインターハイに出場していくクラブがたくさんあるのですが、学校保健委員会を開催するとなると、内容に応じては運動部からもメンバーに入ってもらうことが必要になってきますので、日程の調整が本当に厳しい状況です。ほかに、保護者の方に入っていただくことも、やはり多くのメンバーで組織をしていることで日程、時間の設定が非常に難しいのです。保護者の方に合わせて夜遅くに開催をするということになると先生が参加しづらくなるなど、いつも頭を悩ませているところです。
また、準備の部分で一番頭を悩ませるのは、議題の設定になるかと思います。本校は学期1回ということで年に3回開いていますが、やはりある程度流れが決まってきてしまいます。つまり、6月くらいは、健康診断の結果を持ち寄って話し合って、うちはここが弱いよねとかいうことで終わってしまう。そして、こういう教育をしたいので何学期の何月くらいにはこの指導をやりますということを発表する会議になってしまうのが悩みどころかなと思っています。
ただ、準備に当たっては保健部として動いていることもあり、学校内の先生方の協力体制ができているので比較的準備は進めやすいと思います。例えば保健主事の先生に外のことをしてもらうとか、学校医さんには自分が連絡しますとか、保健室に多くのメンバーがいることもあり、仕事分担という意味では養護教諭が1人で抱えずにできることもあるかと思います。

濁川 本校は3年前に3校が統合した学校で、今、4年目です。統合した年に学校保健委員会もしっかりやっていこうと、年に2回開く予定だったのですが、3校統合ということで校内がとても荒れました。それで年1回のみとなっています。管理職も理解があって、学校保健委員会をできるだけ開きましょうと進めてくれるのですが、私が保健主事を兼ねていることや、学校保健委員会に校医さんに集まってもらう日程調整が1学期には取れなくて、結局3学期に1回ということになっています。それが私の企画の段階での一つの悩みですが、保健部には学年主任が入って、とてもよく動いてくれます。ただ、それを企画する私が保健主事を兼ねていて1人ですべてをやらなくてはならないのは荷が重いと感じています。
また、校医さんは全員で5人いらっしゃるのですが、5人すべての方に出ていただくのは最初から比較的難しいなと思っているので、少なくとも3人出られる日をと思って日程を調整しています。
保護者の方に関しては、なかなか参加が得られません。別に学校保健委員会だけではなくて、すべての学校行事にかかわるPTAの参加者が少ないということで、昨年度から保護者の方全員がPTAの委員会に入ることになりました。500人いる生徒の保護者の方が各部に入るので、保健体育部として学校保健委員会に参加対象になる方は100人います。ただ、通知は100名出しますが、実際にいらっしゃるのは15名です。PTA本部もいらっしゃいますから、20名の保護者が参加している状況はあります。決して積極的に参加しているという雰囲気ではありません。
学校保健委員会を始める前の大きな悩みとして、会議の議題を何にしようかということもあります。3学期に保健委員を使って何かを発表させようとすると、2学期から保健委員の活動の中に調査を入れたり、話し合いをさせて何をするかを決めたりすることも必要です。
また、校医さんができるだけ出てくださるので、校医さんが発言しやすいものも議事に入れようと思っています。昨年は初めて中学校の歯科校医になられた方だったので、歯科医の先生が必ず出ていただけるように、歯についてのアンケートを子どもがまとめて発表しましたが、やはりテーマをどうするかは大きな課題だと思います。

増山 小学校は、1年から6年までで子どもたちが大きく成長していくときだと思います。また、とても素直な時期なので、何か活動するとなると本当に一生懸命にみんなで活動してくれます。ですから、子どもたちが自分たちで活動して、自分たちで学校を変えていけたという気持ちが持てるテーマを毎年考えるようにしています。
本校では、一つのテーマで何年か続けて活動しています。年2回開催するのですが、2回目には保護者の方、先生方、校医さん方も一緒に課題について話し合い、次の年は同じテーマでも特にこの部分について強化していこうというように次のテーマを決めています。そして、数年同じテーマを続けて、そろそろ次のテーマにしようかとなったときには、先生方にアンケートを取ったものをまとめて保健部で話し合い、職員会議にかけて決めています。
小学校にも保健部があり、そこが中心になって話し合いをしていきますが、保健部とはいえ、みんな何年生かの担任であり、ほかの仕事をたくさん持っている中で、たまたま保健部にも名前が入っているというだけで、その人に最初から運営や会場準備や何やら全部一緒にしましょうというのはなかなか難しいです。どうしてもこちらが主体とならざるを得ません。
日程は、年度初めに教務の方が決めた年間の予定表の中に入っているので、日程で悩む必要はありません。水曜日が休診日の校医さんが多いので、そこに合わせて開催日を決めてはいますが、テーマも毎回、歯とか目というわけにもいきませんし、自分にかかわりがないテーマだとなかなか来ていただけません。内科校医さんと薬剤師さんはほぼ毎回参加してくださっていますが、そのほかの校医さんにも行ってみようかなと思ってもらえる中身を企画できればと思っています。
PTAに保健委員会がありますので、保護者の方は必ず参加してくださいますが、一緒に企画の話し合いをするのはなかなか難しいというところはあります。

衞藤 小中高とご苦労がそれぞれ違うのですね。

濁川 私は小学校にも少し居たことがあるのですが、小学校は学校保健委員会はきちんとするという意識が先生方に結構あります。抜けるのは中学校です。部活もあるし、そんな時間にという雰囲気がある中で、自分1人で何かしようと思うから、忙しいから1学期は割愛とか自分で思ってしまうのかなと反省しながら聞いていました。高校のようにきちんと保健部があるのだから、それをもう少し動かさなければいけないなとすごく感じました。

櫻井 私は採用されてからはずっと高校ですが、講師のときは中学校にも少しだけ、小学校も何年間という経験があります。小学校は確かにすべての行事もみんなで頑張ろうという意識があったなと思うし、この6年間は心も体もものすごく成長するということを小学校の先生方は念頭に考えておられると思うのです。中学校になると、もう少し生徒指導や進学のことなどに先生たちの気持ちが分散していくという感じは私も実際に受けたので、先生が言われたことはとてもよく分かります。

濁川 教科担任制なので自分の分担をきちんとやるというのが基本で、健康に関することは保健主事と養護教諭というスタンスが先生方にあるのです。私たちがきちんとしないと下に広がっていかないとお話を聞いていて思いました。

増山 それが校種の違いですかね。私は小学校しか知らないので、この日に開催するのが当然ということがあるので、開催をどうしようかという苦労はありません。逆に、絶対やらなければいけないというプレッシャーのようなものもあります。