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2012年の「はしかゼロ」をめざして [3]

麻疹の予防法

~事前準備が最も重要、1人の時点ですぐ対応が合い言葉~
麻疹の予防法

 麻疹は、手洗いやマスク、うがいでは、予防できません。麻疹含有ワクチン(麻疹ワクチン、麻疹風疹混合ワクチン、日本では現在、使用できませんが、麻疹風疹おたふくかぜ混合ワクチン、麻疹風疹おたふくかぜ水痘混合ワクチン)を受けることが唯一の予防方法です。

 ウイルスや感染症の専門家は、麻疹から1人でも多くの子どもたちを守ることを目標に、ワクチンの研究開発に力を注ぎ、日本では1960年代から任意接種として麻疹ワクチンの接種が可能となりました。開発当初は、毎年多くの麻疹患者と、麻疹による死亡者が発生していましたが、1978年から予防接種法に基づく義務接種になり、多くの子どもたちが麻疹ワクチンの接種を受けるようになると、徐々に患者数は減少していきました(図1)。その後、国内で麻疹風疹おたふくかぜ混合ワクチン(MMRワクチン)が開発され、1989年には、麻疹ワクチンの定期接種時に、MMRワクチンを選択してもよいことになりました。しかし、おたふくかぜワクチンの成分による髄膜炎が多く発生したことから、1993年にMMRワクチンの接種は中止となり、麻疹ワクチンと風疹ワクチンの接種が定期接種として別々に継続されることになりました。1994年の予防接種法の一部改正で、義務接種から、保護者は子どもに受けさせるよう努めなければならない努力義務接種に、集団接種は個別接種に変更となりましたが、決して、受けても受けなくても良い任意接種に変更されたわけではありません。しかし、目標とされる95%以上の接種率には到達しておらず、今の中学生・高校生・大学生世代の麻疹ワクチンの接種率は85%程度にとどまっていると推定されています。一方、幼児期の子どもたちは、2001年の流行以降に始まった「麻疹ワクチンを1歳のお誕生日プレゼントにしましょう」効果により、2歳児で95%以上の高い接種率となっており、患者の年齢は乳幼児から、0?1歳と10代?20代の二峰性を示す年齢分布へと変化しており、麻疹は決して子どもの病気とは言えなくなっています。

 麻疹ワクチンは有効性・安全性にすぐれたワクチンですので、1回接種で多くの人が免疫を獲得しますが、5%未満の人は残念ながら免疫がつきません。また、接種から年数が経つと、10?20%程度の人で免疫が下がってくることがあります。しかし、2回接種を受けると、発症予防は更に確実になります。これらのことから、2006年6月2日から、1歳児と小学校入学前1年間の2回接種制度が始まっています。

つづく

国立感染症研究所感染症情報センター 多屋馨子

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http://idsc.nih.go.jp/disease/measles/index.html
2012年の麻疹排除(Elimination)を目標に、2007年8月厚生労働省において、わが国における「麻疹排除計画」が策定されました。これを機に、麻疹排除に向けた本格的な取り組みが国民ひとりひとりに求められています。

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電子図書館:学校における麻しん対策ガイドライン

掲載日時:2011/02/21